第2話 ある軽装戦士のログアウト後

 ゲームの中で占いを聞き、そのあとすぐにログアウトした。


 「すぐに思わぬ知らせが届く」という言葉が気になって仕方なく、携帯を見てみるが何の通知もない。


 大きくため息をつきかけてふと思いつきメールをチェックした。すると迷惑メールフォルダに知らないアドレスからメールが届いているのを発見した。


 メールの届いた時間はクラスメイトの美羽と長い電話をしていて、いよいよ本題の大事な要件を伝えようとした瞬間、いきなりブツリと電話が切れてしまったそのすぐ後だった。


 恐る恐るメールを開く。


 <美羽です。さっきは電話の途中でいきなり切れてしまって、本当にごめんなさい。実は電話の時お風呂に入っていて、電話をお風呂に落としてしまいました。そういうわけで今日は電話できないのですが、お話の続きを明日学校でしたいです。ダメでしょうか>


 安堵のため息が漏れる。


 さっきまでの自分はいったい何を考えていたんだろう。


 美羽が話の途中でいきなり電話を切ったりしないことは自分が一番よくわかっているはずなのに。


 「ごめん、迷惑フォルダに振り分けられてて気づくの遅れた。携帯大変だったね。ご愁傷様。では、お話の続きは明日学校で。お休み」


 やっぱり美羽はすごい。


 美羽のメール一つで自分はこうも簡単にも気分がかわってしまう。


 大丈夫、大丈夫と自分を励ましながら電話をして、動揺して、自信を無くして、その後すぐに立ち直って。なんて浮き沈みの激しいことだろう。


 でも仕方がない。今日はいつもの電話とは違ったのだ。ずいぶん長く続けてきた美羽と自分との関係が、どんな形になるにせよ変わるはずだったのだから。平常心などでいられるわけはないのだ。


 電話でもこれだけ取り乱したのだ。明日実際に会って伝えるとなると電話よりもはるかに大きな勇気が必要になるだろう。


 でも、そうせざるを得なくなってしまった。さっきそう約束してしまった。


 恋愛とか運命の神様みたいなものに仕組まれたような気分だった。


 運命の女神様。もしそんなものが本当にいるなら、きっと間延びしたしゃべり方をする、緑のドレスの女神に違いない。


 明日学校で。


 自分にできるだろうか。


 でもまあ、頑張ってみよう。


 何しろ自分は自信家らしい。さっきそう言われたのだ。


 なんだか、うまくいきそうな気がした。




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