12月24日 18:54
予定が無くなったその日は、家の中でゆっくり過ごした。テレビでニュースを見ながら夜ご飯を食べていたらスマホが鳴った。彼からだった。
〈会いたい。〉
〈急だけど、家行ってもいい?〉
〈ほんとごめん。〉
『いや、急すぎでしょ...』
散らかった机の回り、ベッドの上にある脱いだままの服、キッチンの流しには洗っていない皿。人を迎え入れる状態とは程遠い。
ひとまず〈散らかってるけど、それでもいいなら大丈夫だよ〉と一言入れ、リビングを片付けているとチャイムがなった。
いつもよりかなり早くに到着したようだ。こんな時間に訪ねてくるのは彼しかいないけれど、一応覗き穴を確認し、ドアを開けた。
『ねぇ、早くない?まだそんなに時間経ってないけど。』
「どうしても会いたくて、走ってきた...」
久しぶりに見た彼は、走ってきたからか肩で息をし、髪も服も少し崩れていて、顔は赤くなっていて、真っ直ぐ、私を見つめていた。
『散らかってるけど、とりあえず寒いから中入って。』
「うん、ほんま急でごめん。」
『珍しいね。いつもはちゃんと前日には連絡くれるから。』
「次会った時でもええかなって思ったけど、やっぱりすぐに言いたくてさ。」
鼻の奥がツンとした。何言われるのか、全く想像がつかない。というよりも、距離を置こうとか、別れようとか、そんなことを言われてもおかしくないような関係性に最近はなっていたから。
『うん、どうしたん?』
少しでも声が震えないように、この気持ちがバレないように、返す言葉は短く、彼の言葉を待った。
「これ、渡したくて。」
彼のカバンから出てきたのは綺麗に包装された長細い箱。リボンをゆっくりとって、中を開けると、輝く石がひとつついているシルバーのネックレス。
「ほんまは、ちゃんともっとええとこで言おう思ってたんやけど、結婚して欲しい。」
『………』
「ほんまは指輪渡したかってんけど、指の大きさとかほんまにそれでええんか不安で、せやからネックレスにしたんやけど、」
『………』
「あかんかった...?」
『...バカ。もう愛想つかされて別れよって言われるんかと思った。』
気づいたら涙で前はほとんど見えなくて、
優しく、力強く抱きしめてくれる彼の背中に手を回して、
『私も、一緒にいたい。結婚したい。』
「うん、ありがと。」
私はそれからずっと泣いて、落ち着くまで彼は抱きしめてくれた。
気づけば時間は1時間と少しが経っていて、私も彼もお腹がすいて、2人で特に何も無い台所で簡単に食べれるものを準備をした。
「あ、これ。」
『待って、まだ昨日の洗い物残してるの。そっち見ないでよ。』
「昨日、赤いきつね食べたの?」
『うん。...何、カップ麺ばっかりだと美容と健康に悪いぞ〜とかいうの?』
「昨日僕は緑のたぬき食べたからなんだかお揃いって言うかなんというか、」
『なにそれ。私たちめっちゃ仲良しみたいじゃん。』
「え、仲良しじゃないの僕たち?」
『さぁね。あー、おなかすいたな〜。』
幸せまであと何歩? 『』 @nizyuukagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます