3.適当なところまで送ってく
どうせ本人、いやヒューマノイドが戻ってくれば、
「医局長室です。俺のIDカードを貸しましたから、少ししたら、ここに戻ってきますよ……多分」
「あらあら? なんだか、仲がよろしい感じですのね?」
「なんすか、その不自然なキャラづけ」
「
「おそばも好きだよ? でも実家は、
うどんに給湯器のお湯をそそぎながら、
「だからお父さん抜きで、
「家庭への夢も希望もなくなるエピソードですね」
高学歴で高収入、格差社会の上位存在さまも、
「あ、
二メートルほどの身長に、蛍光グリーンとスカイブルーの
すぐ後ろに、
「わあ! ロボ
「でしょでしょ? 民間モデルのデザイナーは日本人もいるって聞いてるけど、この、後半でブースターとかキャノンとか増えそうな感じが良いよねー!」
ノリの悪い男どもを置き去りにして、
「日本でもっと普及すれば、これから、いろんなオプションが出るかもね! メイドさんっぽいのとか、赤くてツノがあるのとか!」
「あ!
「そういうの、本気で作られそうなのが困りますね……」
日本人の、特にエンターテインメント方面の探究心は、すさまじい。コスプレ感覚のヒューマノイドが街にあふれる光景を想像して、なんとなく、
その横で、もう最初から理解を
「
「……意味がわからん。
年に一度は帰省を約束させていた娘が、こんな状態で、こんな差し入れを持ってくれば、こんな顔にもなるだろう。
「それじゃあ、会いたいみんなに会えたし、あたし、そろそろ家に帰るわ。夜が遅くなっちゃったけど、ママにも、顔を見せなきゃだしね」
「だから、それは顔を見せることになるのか? まあ、いい。ちょっと待て、適当なところまで送ってく」
食べ終わったカップ容器を片づけながら、コートの
「レン? な、なに言ってんの、大丈夫だって。ほら、あたし、ロボだもん」
「全身、精密機械だぞ。盗難とか破損の
「……あれ?」
「これだ。かっさらわれて分解されたら、
「そんなわけで、すいません。お先に失礼します」
********************
貸したIDカードを返してもらい、職員ゲートから病院を出ると、空気の澄んだ夜空が見えた。
寒いが、関東にまだ雪はない。白い息を
「おー、星がきれい! 日本の冬は、やっぱり景色が違うねえ」
「集光装置とか、赤外線とかないのか?」
「元の軍事モデルはあるみたいだけど、民間用は普通の光学カメラだけだってさ。夜遊び対策かな?」
「まあ、将来的には、代理犯罪の防止なんだろうなあ」
犯罪者本人は快適な屋内から、軍隊と同じ精度で夜間偵察なんてされたら、大問題だろう。のぞきや盗撮、ストーキングなど、便利な道具は悪用できる範囲も広い。
「あー、なるほどね。それは確かに、困りものだわ」
下ネタジョークの印象が強すぎるが、基本は快活でよく笑う、はつらつとした美人だ。つられて
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