2.デキるようになったわね!
手に、けっこうな大きさのビニール袋を持っていることに、
「もうコート着てるってことは、帰り支度よね? はい、これ! 差し入れだから、適当に何個か持ってって」
食堂のテーブルの上に置かれたビニール袋から、中身が転がり出る。もうすぐ誕生から一世紀を迎えようとする、赤と緑の和風カップ麺だった。
「おー……ありがとな」
帰省の
それでも、赤と緑の組み合わせに、
「
「あ、先に言われちゃった。デキるようになったわね!」
「そりゃどうも」
だいぶロサンゼルスのノリに
ラップと
「ちょっと。そこまでわかってて、なんで緑のそばなのよ?」
「差し入れなんだろ? 好きに食わせろ。俺は、ロサンゼルスのマッチョガイじゃないからな。長ければ細く
「そんな元気のなさじゃ、モテないでしょ」
「大きなお世話だ」
自分でも思っていたことを直撃されて、
「
「おまえ、自分の差し入れを食わせる気がないのかよ? 俺のことなんか、からかってないで、さっさと本命のところ行けって」
「本命?」
「
一般外来と入院病棟は八階までで、それより上階へ行くエレベーターは病院職員の専用だ。
意外ときれいな動作で、ヒューマノイドがキャッチした。こういう動きは自動制御なのかも知れない。
技術者として興味を引かれたが、この状況で全身を見回したり触ったりすると、法的にはともかく相互認識的に犯罪が成立しそうなので、
「ありがと。レンって、ぶっきらぼうなくせに気が回るよね」
「礼くらい、素直に言え」
テーブルに戻って、カップ麺が
「あ、ちょっと待て! そんな格好、いや、電波たれ流しで院内を……」
言った時には、もう遅かった。
これまた妙にスムーズな動きで、ヒューマノイドが食堂を出て行った、まさに瞬間だった。なるほど、基本動作は外部センサーを同期して、パターン化されているのだろう。
「まあ、今どきの機械で混信もないか」
電波が混信するということは、対象以外に内容や位置関係を
民間産業でも、情報の保護や事故防止で、規格の技術レベルは高い。まして兵器の大部隊を遠隔操作する最新軍事技術の転用に、それらの対策がされていないわけがない。
「食べ終わる頃には、戻ってくると良いんだけど……あんなのじゃ、
IDカードを、預けたままにはできない。食べ終わっても待たされるようなら、ついでに赤いうどんも食ってやろうか、と考えていると、自動扉の開く音がした。
見ると、
「あ、レンくんだ。お仕事上がりですか、裏切り者ですか。お疲れさまでーす!」
これまた、からかうような半笑いに、
「
「聞かれて困る彼女ができたら言って! 一晩おいて『
「誤解の上に誤解を重ねるスタイル、やめてもらえますか」
「この病院、可愛い看護師さんいっぱいいるし、レンくん良い人ってみんな言ってるよ。がんばってねー」
「絶望的な情報、ありがとうございます」
病院スタッフというのは、
看護師は伝統的に、現代でも女性が多い。そして医師を含めて、交代制の昼夜勤となれば、病院内の人間関係は
こんな状況で、特に女性スタッフが、出向の技術者なんかとどうこうなれば、妥協しました、と大声で
競争原理は、生物の進化と資本主義の鉄則だ。理不尽ではない。
「なにこれ、すごい! うどんとおそばが山盛りだね。食べて良いの?」
「どうぞ。
「え?
来てるか、と言われれば来ていないし、どこか、と聞かれればアメリカのロサンゼルスだ。
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