moon

@shdw

第1話 秘密

 俺には秘密がある。それは暗所恐怖症ということ。

 幼いころ、兄に蔵に閉じ込められてから暗闇が怖くなった。夜の外出は誰かと一緒でないと歩けないほどだ。だから部活も早くに終わるものにした。

 だと言うのに、外は真っ暗だ。

 何もかも、あのクソ教師のせいだ。

 今日は日直だったから日誌を担任に提出に行った。問題はそこからだ。担任の愚痴が一時間におよび開催され、気づけば六時。季節は冬。つまり日が暮れた。

 呪われて死ねばいいのに。

 そんなことを考えたのがいけなかったのか。いきなり廊下の明かりが消えた。

 う、ウソだろ。

 さっきまでの威勢は消え去り、おそらく怯えた顔をした自分がいる。

 こんなとこ、誰かに見られたら。

 笑われる。バカにされる。いじられる。虐められる。閉じ込められる。いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ。

「そこで何してんの?」

 終わった。声を掛けてきたのはクラスメイトの楓さん。

 だけど今の俺はそれどころじゃない。

 彼女は不思議そうな顔をしながら近寄って来た。

「あんた、もしかして……」

 彼女が何か言おうとした瞬間、男子の騒ぎ声がした。少しずつ声は近くなっていく。

 逃げなくちゃ。

 背を向けて逃げようとすると、腕を掴まれ近くの空き教室に投げられた。投げたと表現したのは、腕を掴んだ勢いで押し入れられたから。

「ここにいて」

 それだけ言って彼女は扉を閉めた。

 あの人たちに言うつもりなのか?

 高校生活が地獄なものになるそう思った。

「あれ、楓じゃん。何してんの?」

「部活終わったから教室戻ろうと思ったんだけど、廊下の明かりが消えたから点くの待ってる。よく転ぶからさ」

「確かによく転んでる」

「うるさい」

 そんなやり取りが続いた。

 五分ほどして扉が開いた。

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