第2話

 濡れた黒髪をかきあげ、女があでやかに笑う。

 首をみ切ったはずの魔術師マルバノはベッドに眠るエイダに掛けられたシーツを破り整えると、それを身体に巻き付けた。

 

 「まだ回復しきれてないわねぇ。身体のあちこちが痛むわぁ。うふふ……本当、引き千切るなんて。くっつけるのが大変だったわよ――まあ、やったのはワタシじゃないけど?」

 

 ふくみのある言い方に少女たちはたじろぎ、その場に留まる。

 蘇生魔法を使える程の魔力の持ち主。

 マルクの件といい、目の前に再び現れたマルバノの女といい。

 

 「自分の洞察力と推理力が、こんなにも嫌になるとは思わなかったわ」

 「ネリ、さっきの魔力は君のものじゃ――」

 「そこについてもまだ上手く説明出来ないの。あたしも混乱してて……原理がよくわからないのよ。コントロールが出来やしないし」

 

 少年少女にないがしろにされた女は、細く整えた眉山をぴくりと苛立ちを表すように動かした。

 ヒヤリとする廊下に散乱した硝子の破片が音を立てる。手を下へつかないよう注意を払い彼と共に体勢を直すと、ふたりは女へ目線をやった。

 

「首の根元……無理やり結合したみたいだ」

「賢者の石の魔力によって無理やり蜘蛛から出されたせいね。強がってはいるけれど、完全に再生されたわけじゃなさそう。恐らく、今はあそこが弱点でしょうね」

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