面白くなるんだ

きと

面白くなるんだ

 次々と、客が席を立っていく。

 ――待ってくれ、俺はこんなものじゃないんだ。

 その想いは届くことなく、また一人、また一人いなくなっていく。

 ――待ってくれ、ここからなんだ。待ってくれ。

 そして、舞台袖で見ていた人間も離れていく。

 ――頼む、待ってくれ。ここからなんだよ。ここから面白くなるんだ。


「えーと、何に乾杯かんぱいする?」

「日頃の頑張がんばりにってことでいいんじゃないっすか?」

「じゃあ、毎日頑張る自分に……」

「「「かんぱーい」」」

 とあるアパートの一室。

 男三人が缶ビールを軽くぶつけて、その中身を一気に口に流し込む。

 季節は冬ということもあり、男は炬燵こたつを囲み、寄せ鍋をつついていた。

 この場にいる三人は全員、お笑い芸人である。といっても、まだまだ売れておらずテレビにも出たことはなく、劇場でネタを披露ひろうするのが主な仕事だ。

 日頃から、劇場での出番が終わって時間がある時には、こうして集まって騒いでいた。

「いやーそれにしても安島やすじま兄さん。また、客がいなくなりましたねぇ。何度目なんすか?」

 金髪きんぱつの若い男がニヤニヤと笑う。

 その様子に安島と呼ばれた男は、少し苛立いらだちを覚えながら答える。

「さぁな。もう覚えちゃいねーよ。ったく、中森なかもり。毎度毎度そのイジリ、きないのか?」

 この三人の中では、一番先輩である安島はもう芸歴十年になるが、売れるきざしが全く見えなかった。

 安島は、年齢で言えばもう三十二歳になる。体型は中肉中背と普通で顔も悪くない。しかし、猫背と短いとも長いとも言い切れない髪型の二つが合わさりなんだか、より売れてません、という暗い空気をまとわせていた。

 安島はピン芸人で、一人コントを主軸にして小さな劇場に立ち続けている。

 だが、ウケたことなどまれで、ネタ中に客が席を立つことなどもう何度もあった。

 中森はそれを舞台袖で見ては、こうして飲み会でイジってくるのだ。

「全然飽きませんね~。それに暗いことは、こうしてネタにしたほうが気持ち楽になると思うんすけど。どう思います、藤田ふじたさん?」

 中森は芸歴三年目の漫才コンビのボケだ。年齢も二十五歳で、この三人の中では一番若いが、三人の中で一番売れているのは中森だった。

 劇場でも何度も爆笑の渦を巻き起こしているし、漫才コンクールでも準々決勝まで進出した。

 お笑い好きの間でも注目を集めているらしく、もうすぐ売れるなんて言われている。

 容姿も体型も良く、金髪がカッコよさをさらに引き出している。イケメン芸人として若い女子の人気者のようで、出待ちもちらほら現れるようにもなってきているらしい。

 ただ、軽薄で安っぽい……いわゆるチャラい性格で、「売れてすぐに週刊誌に記事が載りそう」とも言われいている。

 そんな中森に話を振られた藤田と呼ばれた男は、鍋の具材を自分の皿によそいつつ答える。

「まぁ、中森の言いたいことも分かる。けど、ほどほどにしておけよ? そうやってイジられることも嫌なことだってあるんだからな?」

 藤田もコンビを組んでいるが、中森と違いコントをメインとしている。

 年齢は二十八歳で芸歴も五年。劇場での人気も上々で、劇場のスタッフの中では、「安定感があるから任せておけば問題ない」と信頼されている。

 容姿は、少し小太りだが、眼鏡めがねをかけた顔は優しい顔つきだ。

 藤田に釘を刺された中森だったが、「へ~い」と気の抜けた返事をした。

 どうやら、中森はあまり気にするつもりはないようだ。

 その様子に残りの二人は、相変わらずだな、とあきれていた。

 この三人が劇場で知り合ったのは、中森が初めて舞台に立った時のことだ。

 もともと楽屋でよく話していた安島と藤田が、中森の初めて客に見せた漫才を見て、面白いと気に入ったのだ。

 客の反応はいまいちだったので中森は落ち込んでいたが、安島と藤田が面白かったぞと声をかけるととても喜んだことを二人は覚えている。

 その話題になると恥ずかしいのか、中森は喜んだことを否定するが、それからというのも三人はよくつるむ芸人仲間になった。

 そしていつしか、今日のように集まって酒を飲むのが恒例になった。


「うわー安島やすじま兄さん、今日飲みますね。もう五本目っすか?」

 飲み会が始まって一時間。安島の前には、空になった缶ビールが五本置かれていた。

「仕方ねぇーだろ。飲んでないとやってられないんだよ」

 そう答える安島の顔は、赤く染まっていた。

 安島とは対照的に、まだまだ普通の顔色をした藤田ふじたが心配そうに安島を見る。

「あんまり飲み過ぎないで下さいよ? この寒い時期に路上で寝てたとか、まじでシャレにならないですし」

「ああ、悪いな。藤田」

「……そう言っておいて、藤田さんが本当に心配しているのは自分の部屋で騒がれないかってことだったりして」

 中森なかもりの言葉にこの部屋の主、藤田は目をそらす。

「藤田。お前……」

「い、いえ。それもありますけど、本心は安島さんのことが第一ですって!」

「そんなんだから、劇場スタッフの女子から腹黒い雰囲気ふんいきがするーなんて言われるんすよ?」

 中森の言葉に今度は硬直こうちょくする藤田だった。

 藤田の様子を見て、安島と中森は思わず笑ってしまう。

 対する藤田は、露骨ろこつせきばらいをすると話題を変える。

「そ、そういえば、安島さん。先週の火曜、この近所のスーパー来ましたか?」

「先週の火曜? いや、来てないが」

「あれ? おかしいな、僕の相方が確かに見かけたって言ってたんですが……」

 自分が忘れているだけかと思い、安島は記憶を辿たどってみる。

 しかし、身に覚えがない出来事だった。

「そーいえば、俺もなんか聞きましたね。夜中に安島兄さんが行きつけの居酒屋いざかやの前をフラフラ歩いてるのを見たって。劇場のスタッフが言ってたっす」

「うーん、最近はあの居酒屋に行ってないはずだが……」

 再び記憶を辿る安島だが、やはりそんな記憶はない。

「あれじゃないっすか? 酒の飲み過ぎで、記憶飛んじゃってるんじゃないっすか?」

「まぁ、確かに最近びるように酒飲んでるが……」

 違和感いわかんはあるが、酒のせいだと言われれば納得できる話だ。

 アルコール依存症いぞんしょう、なんて病気もある。

 酒を飲む量を減らした方が賢明けんめいだろう。

「でも、酒飲んでねぇーとやってられないんだよなー畜生ちくしょう

「なんかあったんですか?」

 藤田の言葉にやめたほうがいいはずの酒を飲む安島。

 一呼吸おくと、ひたい炬燵こたつにくっつけてぽつりとこぼす。

「親がいい加減に芸人はあきらめろ……ってうるせーんだよ」

「あーそれは鬱陶うっとうしいっすね」

 安島は、もう三十路みそじを超えている。

 両親としては、普通に働いて、普通に結婚して、普通に暮らしてほしいのだろう。

 その気持ちが分からない訳ではない。

 でも、安島は夢を諦めたくなかった。

 子供の頃からテレビで見て、笑顔を届ける姿に憧れた。

 あんな素敵な人間になりたい。

 自分も笑顔を届ける人間になりたい。

 その一心でここまで頑張ってきたのだ。

 たとえ、ウケていなくても。

 舞台は、安島の命なのだ。

 簡単には、諦められなかった。

「芸人ってのは、下積みが長いもんなんだよ! 俺はまだまだこれからなんだよ! これから面白くなるんだ!」

「おお! その通りっすよ! 俺らはまだまだこれからっす!」

 熱く手をにぎり合い笑う安島と中森。

 次に売れる、なんて言われている中森が、全く売れていない安島に同調しても嫌味にしか聞こえない気もするが、酒が入った状態ではそんな細かいことには気づかないようだ。

 完全にできあがった状態で大声で騒ぐ二人を見て、藤田はため息をつく。

 これは明日、大家から苦情が来るな。

 それでも、何だかんだで楽しんでいる藤田がいるのも、また事実なのだった。


 藤田の部屋での飲み会から二日経った日。

 安島やすじまは自分の部屋で机に向かい、新しいネタを考えていた。

 中森なかもりからイジられている客が席を席を立つ問題。

 それをいい加減にどうにかしないと、ただでさえ見通せない売れている未来がさらに遠くなってしまう。

 劇場のスタッフも白い目で見てくるだろう。

 だからこそ、インパクトがあり面白いネタが必要だ。

 だが、朝から昼の今まで休憩をほとんど取らず考えているが、なかなかいいネタが思いつかない。

「うーん、なんかいいアイデアが生まれてくれればいいんだが、うまくいかねぇなぁ」

 椅子いすにもたれのけぞって、天井を見上げる。

 ――さて、どうすっかな。気晴らしに散歩でも行くか?

 と、その時机の上の携帯電話が鳴る。

 携帯電話を手に取り画面を見てみると、どうやら中森から連絡があったようだ。

 アプリを開いて、内容を確認する。

『安島兄さんに聞きたいんですけど、昨日劇場まで行きました?』

「……ああ?」

 安島は、眉をひそめる。

 昨日は一日中バイトで、夕方になって家に帰って後から今日現在まで部屋を出ていない。

 ――こりゃ、誰かと見間違いしてんな。

 そう思って、安島はメッセージを返す。

『いいや、行ってないな。どうした?』

『いやー昨日、芸人仲間の何人かと出番終わりに飲みに行こうって話になったんす。その夜の十時くらいに、劇場の近くで安島兄さんを見たんですよ。出番じゃないのし、夜も遅いのにどうしたんだろう、って話になって』

『他人の空似そらにだろ? 人間にはよく似ている人物ってのが何人かいるって言うじゃねーか。それだよ』

『うーん。でもその人、安島兄さんが良く着ているアウターと同じもの着てたんですよ。また酒飲んで忘れているだけじゃないんすか?』

 中森からの返信に昨日のことを思い出す安島。

 確かに昨日も家で一升瓶いっしょうびんを一本飲み干した。

 だが、今朝起きた時、酒を飲んでいたテーブルの前にいたし、中森が言うお気に入りのアウターもハンガーラックから動かした形跡けいせきもなかった。

 一昨日おとといの飲み会でも身に覚えのない目撃情報があったので、少し気になる。

 でも、今はネタ作りが優先だ。

『とにかく俺は、昨日の夕方から今まで部屋から出てない。さっきも言ったが他人の空似だ。今、ネタ作りで忙しいからこの話はこれでおしまいな』

 メッセージを送信して、携帯電話を布団へと放り投げようとする。

 その時、またしてもタイミングも良く携帯電話が鳴る。

 見てみると、今度は母親からの連絡だった。

 気は進まないが、内容を確認する。

『ねぇあんた。今日は、お父さんの誕生日よ。迷惑かけているんだから、一言おめでとうくらい言いなさいよ。私たちとしては、プレゼントとして芸人を辞めてくれると嬉しいんだけど』

 安島は舌打ちをして、携帯電話を布団に投げる。

 ――こっちの気持ちも知らないで、ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。

 本当は、安島だって心のどこかで引っかかっているのだ。

 このまま、芸人を続けていてもいいのだろうか?

 両親への申し訳なさを感じていない訳じゃない。

 もう両親だって若くないのだから、いつか恩返しをしたいと思っても遅くなってしまうかもしれない。

 普通に働いて、普通に結婚して、普通に暮らした方がいいのかもしれない。

 それが両親への恩返しになるなら、多くの人が芸人を辞めること決断するだろう。

 でも、舞台が安島の命なのだ。その命を簡単には捨てられない。

 それに、まだまだこれからなのだ。

 これから面白くなるのだ。

 心が両親への罪悪感と夢への執着心しゅうちゃくしんでいっぱいになる。

 ――ダメだ。今日は、これくらいにして続きは……。

 そう思った時。安島はひらめいた。

 ――そうだ! 子供の頃のあの出来事をネタにしよう!

 安島がまだ小さな子供の頃。

 家で飼っていたハムスターにミント味のお菓子をくだいて与えて、かなり怒られたことがあった。

 ハムスターは嘔吐おうとするし、お菓子は自分でペロペロとなめて地道に三日間も食べ続けたのだ。

 それを中森と藤田に話したところ、とてもウケたのだ。

 ――あの体験をネタにできれば、かなり面白いものになるぞ。

 そうして、意気揚々いきようようとネタ作りにはげんだ結果。

 安島は、自信作とも言える新ネタを完成させた。

 次の舞台は、絶対にウケると自信に満ちあふれていた。


 新ネタを作ってから一週間経った。

 安島やすじまは、劇場の舞台の袖にいた、

 今日まで何度か舞台に立ったが、どれもウケず客が席を立っていった。

 ――また中森なかもりにイジられたりもしたが、それも今日でおしまいだ。

 安島は、これからの巻き起こるであろう爆笑の渦を前に浮足立っていた。

「安島さん。なんだか嬉しそうですね」

 その声に振り向くと、コント用の衣装に身を包んだ藤田ふじたがいた。

「おお、藤田。今日のネタは自信作だからな。うずうずしてんだよ」

「おーそうなんですか。じゃあ、袖で楽しませてもらいますよ」

 そうすると、安島の二組前のコンビの出囃子でばやしが鳴る。

「どうも~!」という声が舞台に響く中で、藤田が声をおさえて安島へ話しかける。

「ところで昨日なんですけど。今度は安島さんの家の最寄りの駅で、目撃情報が出てるみたいですよ?」

「またか……」

 今日に至るまでの一週間。

 安島を見たという目撃情報がかなりの数、耳に入ってきていた。

 それのどれもが安島のよくいる場所での目撃情報であり、安島本人に身に覚えのないものだった。

 ここまでくるともはやその目撃情報上の安島は、わざと安島に似た格好をして安島がよく行く場所に出没しているのではないか、と思える。

 では、その人物の目的は何なのか?

 売れている芸人に成りすまして、何かスキャンダルになることをする。そうすることで、その売れている芸人をおとしいれる……ということも考えられなくもない。

 だが、悲しいが安島は全く売れていない芸人だ。そんなことをしても何の得にもならない。

 何がしたいのか、行動の理由が全く見えなかった。

 手をあごに当て、考える安島に近づく影があった。

「あ、安島兄さん!」

「うお! 中森か! びっくりさせんな!」

「ちょ、二人とも声大きいです」

 藤田の注意に小さな声で「すいません……」と謝る安島と中森。

 舞台から離れたところまで移動して、話を続ける。

「んで? どうしたんだよ、中森」

「いやー、今日新ネタやるんすよね。楽しみにしてたんすよ!」

 そうだ。今は謎の不審人物のことを考えている場合ではない。

 芸人人生が変わるかもしれない勝負ネタの前だ。そちらに集中しなくては。

「ああ。楽しみにしていろ、中森。藤田もよく見ておくんだな。ここから俺の人生は、面白くなるんだ!」

「はい、楽しませてもらいます!」

「僕もです。頑張ってください!」

 その時、劇場スタッフが安島に声をかける。

 どうやら出番のようだ。

 安島は、幕の下りた舞台に立ち、準備を整える。

 ――ここからだ。ここから面白くなるんだ。

 そして、舞台の幕が上がる。

 客は合わせて十五人ちょっと。

 少ないかもしれないが、何の問題もない。

 ここにいる人たちが、安島という芸人の伝説の始まりの目撃者になるのだから。

 そうして、安島の自信のネタが始まる。

 だが、ネタが始まって一分経っても三分経っても、笑いは起きない。

 ――なんでだ。こんなにも面白いのに。

 やがて、客の一人が席を立つ。

 それを皮切りに、次々と、客が席を立っていく。

 ――待ってくれ、俺はこんなものじゃないんだ。

 その想いは届くことなく、また一人、また一人いなくなっていく。

 ――待ってくれ、ここからなんだ。待ってくれ。

 そして、舞台袖で見ていた人間も離れていく。

 ――頼む、待ってくれ。ここからなんだよ。ここから面白くなるんだ。

 気づけば、客席に一人だけ残して、誰もいなくなっていた。

 袖で見ていた芸人たちも。十五人近くいた客も。

 たった一人だけを残して。

 安島は、力なく舞台の中央で立ち尽くす。

 一人残った客のことなど、目に入らない。

 あれだけの自信があったネタでも。

 誰の心にもひびかない。

あわれだな、あんた」

 その声に安島はハッとする。

 そして、怒りがこみあげてくる。

「哀れだと……?」

「ああ、哀れだよ。あんたが何をしようが、どれだけ頑張ろうが、誰の心にも響かない」

「黙れ! 客だからって何を言ってもいいとでも思っているのか!?」

 アウターのフードを深く被ったその男の客は、ニヤニヤとしゃべり続ける。

「いいや、そんなことは思っちゃいないよ。でも、あんたならいいかなってさ」

「……? どういう意味だ?」

「さぁな。それより、あんたは自分が哀れだと思わないのか? 自信のあったはずのネタでも客が席を立って。応援してくれた芸人仲間も見向きしない。両親からも芸人をやめろと言われる。もう十分じゃないか?」

「うるせぇな! いいか!? 俺は、これからなんだよ! ここから面白くなるんだ!」

 男の客は、静かに首を振る。

「いいや、面白くならないね」

「なんだと? お前に何が分かる!」

「分かるさ」

 男の客は立ち上がり、ゆっくりと安島へと近づいてくる。

 そして、深く被ったフードを取る。

「だって――俺は、お前なんだから」

 安島が気に入っているものと全く同じアウターフードの下の顔は、安島と全く同じものだった。

「………………………………は?」

 安島の思考が停止する。

 その間にも安島の顔をした何かが舞台にさらに近づいてくる。

 そして、安島は思い出す。

 姿形が全く同じもう一人の自分。

 そのもう一人に出会ってしまえば――。

 安島は腰を抜かして座りこみ、後ずさりをする。

 安島の顔をした何かは、ゆっくりとおびえる安島に迫る。

 二つの影が、舞台に寄り合う。

「待ってくれ。俺はこんなものじゃないんだ」

「いいや、待たないね。それに、お前はこんなもんさ。だから、俺はお前になる。そして、芸人を辞めて、普通に働いて、普通に結婚して、普通に暮らす。いいだろ?」

 二つの影が、近づいていく。

「待ってくれ、ここからなんだ。待ってくれ」

「お前自身、もううんざりしてたんだろ? こんな生活に。安心しろよ、きっと中森も藤田との縁は切れたりしねぇさ。両親も喜ぶだろ。それに、誰かが見てくれるぞ?」

 二つの影が、重なる。

「頼む、待ってくれ。ここからなんだよ。ここから面白くなるんだ」

「ああ、そうだ。ここから面白くなるんだ」

 安島の顔をした何かは、手を伸ばす。

「でも、お前の出番はここで終わりだ」

 そして、舞台の明かりが消えた。

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面白くなるんだ きと @kito72

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