第20話 Marry me(20)

「ありがと・・。 ほんと・・いままで。」



夏希は涙を手で少し拭いながら言った。




「・・隆ちゃんと。 頑張っていい家庭を作るね。 ・・ウチみたいに。 いっつも・・お母さんの笑い声がきこえるみたいな、」



母はもう涙で何も言えなくなってしまった。





「・・社長、」



高宮は真太郎に車椅子を押されて控え室に来てくれた北都を見つけて駆け寄った。



「・・おめでとう、」



静かに微笑んでそう言われて





「・・ありがとうございます。 ほんと。 社長に来ていただけて嬉しいです、」



「・・おれも。 来れて嬉しい。 おれがこんなになってしまったせいでおまえにも本当に苦労をかけた。 これからも・・真太郎を助けて会社を支えて欲しい、」



そっと右手を差し出した。



高宮は感動し、両手で北都の手を包み込むように頭を下げて握手をした。





「うわ~~、めっちゃキレイやん! 加瀬~~!」



控え室を出ると南たちに囲まれた。



「ほんと。 いつもの加瀬さんじゃないみたいよ。」



萌香も翔を抱いて来てくれた。




その横にいた斯波は



やっぱり気軽に声が掛けられなくて。





「斯波ちゃんもなんか言ってやったら?」



南がからかうと



「え・・。 あ~、ま。 結婚式でいつものおまえじゃあ・・なあ。」



斯波は大いに照れて決して夏希と目を合わそうとせずにそんな言葉を言ってしまった。






そこに



「・・馬子にも衣装だなあ、」



親戚に支えられるようにして杖をついた老人が歩み寄る。



「・・おじいちゃん!」



夏希は驚いた。



東雲老人だった。



あれから何度か彼の病室を訪ね、夏希の図々しさと人懐っこさで『おじいちゃん』と呼ぶくらい打ち解けてしまった。




「まるで。 別人じゃ、」



彼は嬉しそうにニッコリと笑った。




「・・ありがとうございます、」



夏希はこんなにみんなに祝ってもらえることが本当に幸せだった。




「ん。 やっぱりこのドレスがよかったね、」



高宮は夏希の姿に満足そうに頷いた。


「うん、」



夏希も笑顔で頷いて、彼の腕を取った。



彼女と出会って


おれはたくさんの幸せをもらった


いろんなことがあったね。


つらいことも


悩むこともあったけど




でも


本当に楽しいことばっかりで。



ひとつ言えることは



そんな出来事があるたびに



おれはきみのことが



どんどん好きになったってこと。





世界で一番好きな人と



家族になれるって



これ以上の幸せって



きっと



存在しない。




彼女の明るく輝く笑顔と



一生一緒に



歩いて行こう。



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My sweet home~恋のカタチ。15---something blue-- 森野日菜 @Hina-green

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