3分で読める赤いきつね宇宙の歴史

山川 湖

レッスン1 創世記

 インスタントフライ麺宇宙、あるいはカオスとメビウスの深淵な三分間宇宙。

 In the beggingとはじまりを綴ろう。僕らが語るその歴史は、たった3分で複雑な宇宙ヌードルを解きほぐす。



 原始の前の時代、宇宙は膨張による膨張を極めたことで、どんなにごく僅かな距離の二点間の情報伝達さえ、光速度の限界の観点から困難になっていた。

 宇宙の中心には情報のハブとなる巨大なガス惑星があり、その地殻から宇宙の隅々に渡るまで無数のガスのベルトが放射状に伸びている。ベルトを光線が走り、他の惑星に情報を与える。

 可視光線の周波数帯には、「・・・---・・・」の情報のみが流れる。この情報が流れる時、ベルトには光線の軌跡がはっきりと見える。

 情報を訳すと、次のようになる。


 --S・O・S

 

 光線はガスに軌跡を残し、最低でもゼロが1万桁つく光年の先に、情報を送る。



 ガスのベルトには、があった。要するに、引っ張れば元に戻ろうとするのである。

 閾値は突然に達した。膨張を極め、宇宙の深淵の先にまで伸びていた空間が、外側への一切の力を止めたのである。累進の外圧力によって伸長を続けたベルトが、突如そのよりどころを失った。均衡はたちどころに崩れ、全てのベルトの原始への回帰をもたらした。

 放射の逆の運動、即ち収縮を、開闢から終末に至るまでのすべての歴史によって堆く積み上げられた反発力によって、暴発的に引き起こしたのだ。

 隣り合うベルトは触れ合い、混淆と混ざり合って、メビウスの回路サーキットを作り出した。光速度のカオスによって偶然もたらされた広大な自然の知恵の輪である。

 ついにはガスのベルトは、カップ麺の器に収まるようなごく僅かな宇宙に止まった。そしてガスは、自らの反発に付随した熱の火力によって、ぼうぼうと燃えたのだ。

 真っ赤な焔は可視光線。それは新たな宇宙を祝う、甚だしかる生の躍動に他ならない。

 人々はもはや、では無かった。


 In the begging, 赤いきつねは宇宙になった。

 そこの緑のたぬきさん、僕とダンスをやらないか?

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3分で読める赤いきつね宇宙の歴史 山川 湖 @tomoyamkum

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