地の獄【一】
本日より『魔眼無双』第2章の執筆&投稿を開始します。
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魔術教会の総本部、その最深部にある
エレンはそこでゆっくりと意識を取り戻していく。
「う、うぅん……っ」
明滅する視界、
自分は今、仰向けに寝ているのだと理解した。
「……ここは、どこだ……?」
上体を起こした直後、視界一面に飛び込んできたのは――漆黒。
果ての見えない、
(……結界?)
よくよく目を凝らせば、自身を囲うようにして、立方体の封印術式が張られていた。
(いったい何が……?)
不可解極まりない現状に不信感と焦燥感を覚えた彼は、
(確か……そうだ。大魔聖祭の話があって、みんなで強化合宿に行って、千年樹林で魔獣狩りをして、それから…………駄目だ、まったく思い出せない)
エレンは小さくため息をつき、キョロキョロと周囲を見回す。
(……よくわからないけど、
そうして彼が両足に力を込めたところで、ようやく
「……なんだ、これ?」
妙な布で両手両足を縛られており、さらに頭から箱のようなものをかぶせられているのだ。
「……邪魔だな」
エレンが僅かな不快感を
(なんだこれ……子どもの
最上級の封印魔具を破壊し、体の自由を取り戻したエレンが小首を傾げていると――上層の方から、男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「だーかーらー! 何度も言ってんだろうが! 俺は
「それは承知しております。ですが、『禁者の間』へ入るには、特別な許可証が必要でして……っ」
「うっせぇ、馬鹿野郎! この胸に燃ゆる『ド根性』が見えねぇのか!? これ以上の許可証はねぇだろうが!」
直後、扉を粉砕する荒々しい音が鳴り、「おじゃま!」という明るい声が暗闇に轟いた。
「あぁもう、なんて人だ……」
「やめとけやめとけ。あの
新人と古株の看守が対照的な反応を示す中、ガッガッガッと階段を慌ただしく駆け下りる音が響く。
(……誰か、来る……?)
エレンが警戒しながら、しばらくその場で待機していると――見るからに元気
「――よぅ、お前が
「そうですが、あなたは……?」
「俺は魔術教会所属のA級魔術師、殲滅部隊三番隊隊長、バン・グリオール! 世界一根性の入った『漢の中の漢』だ! よろしくな!」
バン・グリオール、二十二歳。
「せ、殲滅部隊の隊長さんが、どうしてここに……? というか、そもそもここはどこなんですか?」
「あ゛ー、こりゃ記憶の混濁……魔眼の副作用か。まぁ難しいことはどうでもいいや。サクッと本題へ入る前に、エレンの置かれている現状をズバッと説明してやるよ」
バンはそう言って、どっかりとその場に座り込んだ。
「で、どこまで覚えてんだ?」
「記憶にある中で一番新しいものは……王立第三魔術学園のみんなで千年樹林へ行き、魔獣狩りをしていたところです」
「なるほどなるほど、戦闘の記憶が丸っと飛んでるわけか。まっ、そうだろうな」
彼は納得したように頷いた後、要点を
「エレンは魔獣狩りの最中、仮面の魔人グリオラ・ゲーテスと遭遇。魔眼の力を解放し、これを殲滅した。同時刻、千年樹林で超強力な魔力反応を感知した俺ら三番隊は、すぐさま現場へ急行。王立第三魔術学園の生徒と瀕死の重傷を負ったダール・オーガストを保護し――途轍もない大破壊の中心で、意識を失ったお前を発見した」
「仮面……魔人……グリオラ……ッ」
エレンの脳裏に当時の記憶が蘇っていく。
「いやしかし、あんときゃさすがに驚いたぜ? まさか
バンは両腕を大きく広げ、さらに話を続けた。
「ブツがブツだけに、本来なら『即処分』すべきなんだが……。殲滅部隊の
「ダール先生は、クラスのみんなは無事なんですか!?」
「心配無用。
「よ、よかった……」
エレンがホッと安堵の息をつくと同時、バンはバシンと両手を打ち鳴らした。
「これが過去の話、そんでこっからが
彼はドスの利いた声を発し、真剣な瞳を真っ直ぐにぶつけるのだった。
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【※読者の皆様へ、大切なお知らせ】
なんと本日、『超自信作のラブコメの新連載』を始めました!
タイトル:白雪姫は甘えたい~『天才を演じる幼なじみ』を陰から支えるラブコメ~あるいは『劣等生を演じる彼』を必死に追いかける青春物語~
URL:https://kakuyomu.jp/works/16816927859217327988
絶対に損はさせませんので、どうかぜひ第1話だけでも読んでみてください!
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