背負ったもの ~全完結~
警察署の玄関ロビーに、両親が立って待ってるいるのが見えた。最近、無茶ばかりしていた。親に内緒だったこともたくさんある。きっと警察からもその辺の説明があっただろう…、合わせる顔がなかった……。
しかし父も母も、何を問いただすこともなく
「体、大丈夫か?」
と温かい言葉で俺を迎い入れた。また目頭が熱くなる。
「…ごめん…なさい…、…すいませんでした…」
謝罪の言葉しか出てこない。下を向いていると、親父が肩に手を回し体を揺らす。俺の目からは、また涙があふれてきた……。
家に帰ったらいろいろ話さなくてはならない。自分の口で、きちんと説明しようと思った。
―――
翌日から学校に行きはじめた。
(この感じ、一体何回目なんだろう?)
思えば高校に入ってから、こんなことの連続だ。今回は容疑者として事情聴取を受けたのだから、クラスメイトや学校側の反応が心配になった。
教室に入るとみんなが一斉にこちらを見た。新之介と後藤が俺に駆け寄ってくる。新之介が興奮した声で言う。
「唯人ー、大丈夫だったか?」
「あっあぁ、もう大丈夫だ。」
後藤はすでに涙ぐんでいた。近頃は彼女の泣き顔しか見ていない気がする。後藤が顔を
「よかったー、もー、心配してたんだよ」
「あはは、ありがと。……新之介、後藤、あの時はありがとう。二人のおかげ死なずに済んだよ」
二人は首を横に振り‶そんなことないよ〟という
「…京香先輩、意識が戻って良かったね。今度お見舞い行かなきゃね」
俺はうんうんと
教室に浅妻先生が顔を出す。
「あっ、
俺は二人に別れを告げ、教室を後にする。てっきり職員室に行くのかと思ったが、校長室の応接間で、数人の教師に事件について事情を聴かれた。
その説明は、授業そっちのけで昼休みまで続き、事と次第によっては、俺は停学になるそうだ。
昼休みになり、やっと解放された俺は、新之介、後藤と共に昼食をとる。会話は自然と‶
「それにしても新之介の
「まあ、少しはあるよ、中2で止めたけどね。
「えっ!後藤も…」
「何よ失礼ね。あの時は取り乱してただけよ。本気を出せば私が一番強いわよ」
「フッ、どうだか…」
新之介は鼻で笑いながら続ける。
「ああ、そういえばさ。熊谷先輩たちも事情を聴きたがってたけど……放課後の部活どうする?」
「そう…だね。バスケ部行くよ。久しぶりに体動かさないといけないしさ」
新之介と後藤は顔を見合わせた。
「何?なんかあるの?」
「いや、部活に行ったら話すよ」
放課後になり、三人で体育館に行く。
俺が復帰することは、新之介からSNSで連絡が行っていた。3年生を始め、部員は全員揃っている。練習もそこそこに、俺は事件や京香さんについて、余計なことを
みんなは真剣に俺の話を聞いている。説明し終わると彼らは天井を仰ぎ見たり、うなだれたりした。女子部員は涙を浮かべている。
「若月も大変だったんだな。俺たちが相談できるような人間なら少しは違ってたのかな?」とみんなが口々に言う。
「そんなことありませんよ、仕方なかったと思います」と俺は説明を付け加えた。
話がひと段落すると、熊谷先輩が言いにくそうに切り出した。
「実はさ、バスケ部…、廃部なるみたいなんだ。部員から殺人犯が出たってことで…。若月がそのこと知ったらさ、また自分のせいだって思うかもしれないだろ。だから、若月と会う機会が一番高い唯人に言っておく。『うちら、全く、何とも思ってないから、
「…はい…、機会があれば、必ず伝えます。」と返事をする。
俺はこの、決して強くはない、1回戦負けのバスケ部に所属していたことを
―――
今日で一学期の授業が終わる。明日は終業式だ。
俺は停学にならずに済んだ。一時は‶退学〟という話も出たそうだが、浅妻先生や一部の
しかし、復帰して二週間が
【実は殺人の共犯ではないか】
との、面白ろおかしいデマが流れているようだ。それに霊感体質だというのもばれたみたいで、京香さんの
【かかわったら不幸が起きる。目をつけられたら呪われる】
を受け継いだらしい。どちらもあながち嘘じゃない。
俺がそうしようと思えば、それは簡単に出来るだろう。危険人物なのは正解なのかもしれない。‶京香さんもこんな孤独を味わってたのかな〟と、それはそれで嬉しくもあり、前向きに
下校中、新之介と別れて家に着くまでの道中、ふと気になったことがあったので大六を呼んでみた。いつも通り、フワッと俺の歩く横に現われる。
警察の取り調べ中、出てきてくれなかったことについては、取り調べから解放された夜に既に話を聞いていた。大六
「俺はお前の使い魔じゃないし、お前が生きるための便利ツールじゃない。お前は今、人間として生きている。俺は人として生まれ落ちた不自由な部分を邪魔しない。基本お前を助けるのは、人の
とのことだった。確かに、あの時いろんな情報を大六から教えてもらってたら、取り調べの
そういう、世の中のどうしようもない理不尽を知ら無い人生は、もう人生ではないということか…。大六の言ってることは、きっと正しいのだと思う。
姿を現して一緒に歩いている大六に俺は
「そういえばさ、あの城跡にいた、凄い数の幽霊達はどこに行ったんんだろうな?みんなちりじりになったのかな?どこかで悪さしてなきゃいいけど…」
「ん?あぁ、言ってなかったか?いるぞ、ほら」
大六が後ろを見て指さした。俺は〝まさか〟と思いながら、そーっと振り返る。
俺の背後には、先が見えないくらいの亡者がひしめいていた。先頭にはあのお葉花魁と殿様の霊もいる。俺は息をのんだ。大六は言う。
「仕方ないだろ、あのままにしておけないんだから。彼女の分もお前が
「!!……」
俺は目を見開き、口を半開きにさせながら言葉が出ない。
「だ、大丈夫だ、心配するな。お前と俺は、既に神の加護を受けているんだぞ。今回の件でそういう縁が、より深く結ばれてんだぜ。四天王、広目天の大きな加護がな」
金光の悪霊使い 第一部 完結
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