若月京香
私の名前は 若月 京香です。
私は、もう死ぬつもりでいます。
私は……祖母を殺しました……。
『勢い余って』とか、『殺すつもりはなかった』とか、殺人事件で捕まった人たちはよく言いますけど、私には、それなりの殺意があったと思います。
祖母を包丁で刺したとき、おばあちゃんは短い悲鳴と
ですが、絶命する寸前、この残酷な仕打ちをした私を許すかのように、血のついた手で、私の
私はその場にへたり込み、放心状態になりました。どのくらい時間が経ったでしょう……。夕方のことでしたが、日はすっかり落ちて、血の生臭さが充満する室内には、外の
ずっとおばあちゃんの
その数はどんどんと増えていって、真夏の夜、街灯に群がる羽虫みたいに、グルグルと私の周囲を飛びまわりました。私は思いました。
「こんなにいっぱいの
と…。なんの抵抗も無く、あるがままを見ていた私でしたが、そのうちに人が話す声が聞こえてきました。
それはいろんな人の声なんですが、うめき声や
少しずつ、人の形も見え始めて、お侍さんや、兵隊さん達の、怖そうな人たちに周りを囲まれた時、一気に恐怖心が出てきました。
『恐い!早く逃げないと!』
何もかもどうでもよくなっていたはずなのに、私は命が
誰かに助けてほしくて…救ってほしくて……、霊感のある
もう深夜でしたが、彼は「これから会いましょう」と言ってくれました。
私は、家のそこら中にいる幽霊と、視線を合わせないように、急いでシャワーを浴び、返り血を洗い落とします。
服を着替え、強い香水を付け、唯人君に私が殺人を犯したことを
そして、ちらちらとずっと見えている幽霊たちを振り切るようにして、待ち合わせ場所のコンビニに向かいます。
コンビニで彼にあった時、私は意外な提案に驚かされました。私が単に鈍感なだけかもしれませんけど、唯人君の表情からは、いやらしい感情は一切読み取れません。
こんな夜中に、親のいる男の子の家に忍び込むなんて、見つかったらいったいどうするつもりなんだろう…?彼はそれも覚悟の上だと言いました。私の危機に、唯人君が一生懸命に対応しようとしている姿が、有り難くて、嬉しくて……、人殺しの私なんかのために申し訳ないと思いました。
抱きかかえられて、彼の部屋に入った私は、胸の
私たちが安全な場所にたどり着き、ほっと緊張が解けたとき、私は、唯人君が
男の人が、その欲望に
彼は私を愛し、私も彼を、そのひと時だけは自分のものにできました。私は
そして、彼は今も、自分の危険もかえりみず、私のそばに来てくれました。もういろんなことが、彼にはわかっているんだと思います。でもまだ…、もう少しだけ時間がありそう……。
死ぬ前に、唯人君には私のことをわかっていてもらいたい。話が長くなりそうで、申し訳ないとは思いましたが、私の生い立ちから話しをしてみようと思いました。
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