決意
「俺は……若月先輩を助けたい。先輩には、悪霊に
「……その通りだな」
「このままじゃ、先輩は、まともな人生を送っていけない。俺はもう、あいつらを許せない。あいつらを退治したい。なんかいい方法はないの?」
「…そうだなぁ…。唯人はもともと、悪霊を
「あー、確かにあのとき、夢中で払いのけてたら、侍亡者が一体、散り散りになったけど…、
「浄化じゃないな、強制的にあの世に送ったんだ。あれがお前の純粋な力なんだぞ」
俺は身を乗り出し、大六に聞く。
「じゃあ、あの時のように、幽霊を殴ればいいの?」
「話はそんな簡単じゃない。あんな
「……」
「刑事も言ってただろ、『
警察で見せられた死体の写真。あの人は、そういう殺され方をしたんだ…と思う。
「この世の
「でもさ…どうにか…なんないの…」
「…唯人…死ぬだけならまだいいが、あいつらに取り込まれたら、お前も亡者の仲間入りなんだぞ。」
「どうしたら…力が手に入るんだ?」
「まぁ、方法はいろいろなんだよ。肉体的な修行をして霊力を高められる人間もいれば、普段の生活の〝気づき〟の中から悟りが開かれるやつもいる。他にも、仏門に入って、いわゆる神仏と
「………」
少し考えたが、俺の答えは出ていた。
「それでも俺、先輩を助けたい、今すぐに。警察の捜査で、若月先輩が連れていかれるのはいつだ?今度彼女に会えるのはいつになる?その間にまた先輩の知らないところで、人が呪い殺されるかもしれない。その人は先輩にとって、俺なんかと違って本当に大切な人かもしれないだろ?これ以上先輩の、人生の邪魔はさせない。もう、放って置けないんだ」
俺は、自分が死んでも構わない覚悟をした。若月先輩さえ助けられれば…。
「大六、先輩を助ける方法を教えてくれ。俺はあいつらに取り込まれてもいいんだ。大六なら知ってるんじゃないの?」
「………」彼は黙ってこちらを見ている。
「馬鹿なのはわかってるよ。でも、もうじっとしてなんかいられない……」
すると、大六は目線をそらし、窓の方を向いて答えた。
「……好きにすればいい。お前が状況を分かった上で出した決断に、俺は守護者として手助けをするだけだ。お前の人生だからな、もともと止めようもないんだよ。」
大六のスタイルは常に変わらない、大事な選択の時は、俺の気持ちを優先してくれる。
本当は見ていて歯がゆい思いをしてるのだと思う。
「ありがとう、大六にはいつも感謝してる」
「ああ、お前は
「ハハ、そうなんだね……。ごめん…」
俺は急に恐ろしく、そして悲しい気持ちになった。本当に死ぬことになるのかもしれない…。そう思うと心が
「……。方法は教える、
そう言うと大六は、何故、あれだけ大量の死霊が、若月先輩を取り囲んでいるのかを教えてくれた。そして、そいつらと戦う方法も………。
――――
「わかったか、唯人。彼女の協力無しじゃあ、この方法は上手くいかない。まずはあの子の話しをちゃんと聞いてやれ」
「わかった。明日、若月先輩に連絡とってみるよ。先輩と協力して、一緒に
「……唯人、俺の言ってるのは、そういうことじゃない。あの子は今、かなり追い詰められている。このままだと協力は得られない……」
「?…どういうこと?」
「俺からは話せない、それは彼女自身の問題であって、この世のものだからだ。…だからお前の〝心の目〟で彼女のことを見聞きしろ。それは俺の〝この眼〟とも違う、もっと大きな〝心理の眼〟だ。人ならだれでも持っているが、それを使ってるやつはなかなかいないんだぜ。」
「?心理の眼?」
「そう、人が本来、誰でも持っている優しい眼さ」
「…わかった…、先輩のこと、もっとよく見てみるよ」
「それでいい…。いいか、死なないようにしろよ、まったく…」
「うん…、やってみる。……ところでさ、俺が死んだら大六はどうなるんだ?俺と一緒にあいつらに取り込まれちゃうの?」
「取り込まれる前に、お前から離れるさ。逃げるくらいの力はあるんだぞ、俺にだって。せっかく守護する人間が見つかったのに、死なれるとがっかりする。
大六が逃げられることを聞いて安心した。こちらの身勝手で、道ずれをさせてしまっては申し訳がない。そして俺も死にに行くわけじゃない。
「もちろんだよ、俺も死にたくなんてない」
この夜、俺は大六と、若月先輩を取り巻く死霊達との戦いのために、必要な
そして、今の俺の能力で、他に何ができるのかも、多少のレクチャーを受ける。
覚えることが結構あって、大六の話を聞いているうちに、いつしか寝落ちしてしまった。ここ連日の目まぐるしい状況の変化で、精神力の限界だったのだ。
翌朝、母親が、階段の下から呼ぶ声で目が覚める。起きがけに大六が現れて
「ゲームじゃねーんだから寝落ちすんなよな」
と小言をもらった。
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