警察車両の中で
「
後藤と新之介と俺の三人で、公園に行く途中、桜井刑事に呼び止められた。
俺に聞きたい事があるとすれば、それは若月先輩のことだろう。彼女の身の潔白を証言するためなら、いくらでも質問に答える。
信じてもらえるかどうかは別の話だが……。
警察車両に乗って、どこかに運ばれている途中、外の景色をなんとなく
俺には、後藤のお父さんが亡くなるのがわかっていたんだ。
検査入院が終わり、久しぶりに彼女に会ったとき、後藤のお父さんらしき人のイメージが頭の中に流れ込んできた。胸の部分に、ドス黒い
それは病院で行き交う人たちにも、しばしば現れていた現象だった。
VIPルームの悪霊を封印した後だったから、俺は自分の能力の疑問点については、いろいろと大六に質問していた。
「体に灰色の
大六が答える。
「そうだな、色によってもいろいろ意味があるんだが、濃くなっていくほど深刻だってことだ。真っ黒くなっていれば、
「ふーん、ここ病院だしね、よく見かけるわけだ。」
その時は、なんとなくこんな会話をしていた。
後藤のお父さんにかかる
しかし、結果は…ただ彼女を困惑させただけのようだ…。いや、むしろ、余計に悲しませたのかもしれない。
後藤のお父さんが亡くなったことを知った夜、大六に訪ねた。
「俺…、余計なことをしたのかなぁ」
大六は真顔で冷静に答えた。
「どのみち死んでいたんだよ。人には寿命がある。寿命が尽きる人間の
「そのつもりだったんだけど……」
「〝見える〟というのはお前の能力だ。生まれつき、
常軌を逸している力がある。確かにその実感はあった。良かれと思って後藤には声をかけたつもりだ。しかし、それは、この力を見せびらかしたかっただけなのかもしれない。事実、彼女をあんなに混乱させてしまった。
後藤の思いつめたような必死な顔が、チラついて離れなかった。
「あの二人は
「あ、はい。そうです」
「なんだか楽しそうな感じではなかったけど。何かあったの?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど……女の子の方に失礼なこと言っちゃって、説明…いや謝罪でしょうか…、しなくちゃいけないところだったんです」
俺は〝だから手短に済ませてください〟という意味を込めて桜井さんに答えた。
「そうか、それは申し訳なかった。取り込んでたんだな。……今日は見てもらいたいものがあるんだよ。だから警察署まで来てもらいたい。ご両親にも了解は得ているから、ぜひ協力を願いたいんだけど…」
「…はい、大丈夫です。」
「ところで、最近、若月京香には会うかい?」
俺の顔は引き締まった。ここからは気を付けてしゃべらなくてはならない。
「……はい、今日もバスケ部の練習で一緒でしたけど」
車がスピードを下げ、ガタンガタンと車体を揺らしながら警察署の駐車場に入っていく。俺は桜井刑事の相棒で、女性刑事の村井さんに「ついてきてください」と言われ、警察署の中に入る。
正面玄関を抜けると、受付カウンターがあり、その奥にデスクが置かれていた。警官の数が多い。思ったよりごみごみした職場のようだ。
俺はロビーを過ぎて、2階の小さな会議室のようなところに案内される。長机を二つ合わせた即席のテーブルに会議用の椅子が置かれていた。
「そこに座って、ちょっと待っててくださいね。」
と村井さんに言われ、パイプ椅子に座る。相向かいにもパイプ椅子がある。
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