祖父の手招き
「……介、新之介」
何処からか俺を呼ぶ声で目か覚めた。暗い部屋の中を見ても誰もいない。
気のせいかと思い、スマホを確認する。夜中の2時15分だった。唯人からの連絡もない。
再び眠ろうと目を閉じた時、また声が聞こえた。
「新之介」
ハッとして飛び起きた。今度は気のせいじゃない、確実に聞こえた。聞き覚えのある老人の声、これは……。
俺は声のした部屋の入口を見た。上半分は
ゆっくりと戸を開け正面を見た……、何者もいない。ただ
右の方……、何もいない。左の方……、かすかに人影があるように思える。意を決して体を廊下に乗り出し、しっかりとその方向を確認する―――。
そこにいたのは二年前に死んだはずの祖父だった。うっすらと
「……じいちゃん、びっくりさせないでよ。どうしたの?」
不思議と恐怖は感じない。声の感じからそうじゃないかと予想はしていたが、その姿を見て安心した。
初めての心霊体験なのに、こんなに落ち着いていられるのは、相手が祖父だからだろう。
じいちゃんは廊下の角に立ったまま、
そんな繰り返しを何回かしているうちに、
ここは
ここが開くのは週に一度、お経をあげる時だけだ。普段から、しょっちゅう出入りするところではない。
だからカギがかかっているはずなのだが、なぜか今は
俺はコンクリートの
地下室だから、電気を着けないと暗くて何があるのかわからないはずなのに、今は青みがかって、ぼやッと周りが見えている。
地下のお堂に着いたところで、やはり祖父が姿を現した。
「じいちゃん、こんなとこで何してんの?何かして欲しいことでもあるの?」
近づくと消えてしまうので距離をとった状態で聞いてみる。すると祖父は、体の向きを変え、毎年、
その瞬間、目が覚めた。俺はペットの上で横になっている。急に現実にもどってきた様で、ぼーっと自分の周囲を見回した。いつも通りの部屋だ。時計を見ると朝4時を過ぎていて、外はだいぶ明るくなっていた。
大きく息を吐いて、また枕に後頭部をおしつける。今起きたことは夢なのだろうか?それにしては生々しい。
(久しぶりにじいちゃんに会ったなぁ、全然怖くなかった……。)
(…じいちゃん…、何が言いたかったんだろ?)
そう思うと、もう眠る事が出来なかった。ベットから跳ね起き、カギを持って、地下のお堂に向う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます