予測された死 完
あまりにも突然でした。朝一緒に家を出て、いつも通り車に乗り込む父を見たばかりです。
担任の浅妻先生から
「後藤さん、お父さんが救急車で病院に運ばれたそうよ。今から私が、あなたを病院まで連れて行くから、急いで準備しなさい」と言われました。
病院に行く道中、父の容態を先生に訪ねましたが「倒れて意識がないみたいだから…」というだけで、具体的なことは言ってくれませんでした。
浅妻先生も大体のことを
私が父のもとに駆けつけた時、母は場もわきまえず、父の名を叫び、泣いていました。周りのお医者さんや看護師さんたちは、母の様子を見守っているだけで動きがありません。もうやれることは全てやった後のようでした。
父の顔は血の気がなく青ざめていました。口にはチューブが取り付けられ、腕には点滴が何本か刺されていたり、血圧計が巻かれたりしています。
胸には心臓マッサージをした後のくぼみが出来ていて、学校の救急講習会で使ったことのあるAEDのパットが装着されていました。私は、だいたいの状況が飲み込めました。
涙がどんどん溢れます。母に聞きました。
「お父さん死んじゃったの?」と……。
母はずぶ濡れのハンカチで涙を拭きながら、真っ赤になった目を一瞬こちらに向け『うんうん』と
後で教えてもらったことですが、父は、いつもどおり会社に行き、仕事中、激しい背中の痛みを訴えて
救急車が着く頃にはもう意識が無く、心臓マッサージを受けながら病院に運ばれたといいます。そして、母が病院に着くなり、お医者さんから、今の容態と、もう助からないことを告げられたと言っていました。
心臓が蘇生しても、その先の大きな血管が破れているため、身体と脳に血液と酸素が回らないと言われたらしいです。病名は『
翌日、お通夜が開かれました。急なことだったので、私は礼服がなく、高校のブレザーで母の手伝いをします。
胸元のリボンがかわいすぎるので、そこだけを黒いネクタイに替えて……。
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