大六とお別れ ー第二章 反撃 完ー

「よし、じゃあ俺は行くからな」


 そういうと、彼は朝靄あさもやに、後ろで手を振りながら、姿を消すのだった。


「もうなんも無いとは思うけど、幽霊だの妖怪だのと関わったときはまた呼べよ。俺が手助けできることはしてやるから……」


 そう言い残し、闇に溶けるように消えていく―。




 これで俺は、日常生活を取り戻せるだろう。結界を作れたのだから、もう悪霊を狩る必要は無い。


 せっかく仲良くなった?お世話になった?

 大六とは、用事が無ければ会うことは無くなるが、その方がきっといいのだ。


 ただ一つ気になるのは、やはり若月先輩の事だ。


 彼女の家にいた大勢の霊、攻撃的なさむらいの亡者、おようと名乗った花魁おいらんの存在。

 あれは、とても放っておけるような状態じゃ無かった。


 部活の時、若月先輩に、その後のことを聞くと、


「不思議なんだけど、葦原あしはら君が来た時以来、変な現象はおさまったんだよ。」


 と、あっけらかんと言っていた。確かに、お葉花魁ようおいらん


『我々はこの子を守っている』


 と言っていた。先輩を霊視してみても、いているモノは一体もいない……。


 違和感はある…。しかし、にわか霊能者の俺が、下手に関わって、また救急車沙汰きゅうきゅうしゃざたになれば、彼女にも多大な迷惑がかかる。


 桜井刑事に教えてもらった、霊の専門家、十二園子じゅうにそのこさんの連絡先も教えてある。俺なんかより、よほど、的確なアドバイスが出るはずだ……これでいいんだ……。


 そう、これでいい……。



 第二章 ~反撃~ 完

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