亀山ドクターと関根 小春
僕の名前は
生きていくうえで、お金は重要な要素だと思っている。だから、医者を目指した。ただそれだけだ。
人間の体は、神秘に満ちているというが、その反面、単純な構造をしているともいえる。
診察、検査から導き出される病態。それに対しての処置、手術、薬剤の
あとは、個人個人の違いはあれど、完治したり…、手遅れなら死亡する。
そんな中、例外的なことが
僕は、
彼女は僕の
小春は
ある日、小春がめまいを
医者が、一般人と同じ病室にいるわけにもいかず、めったに患者が入らない、あのVIPルームで入院することになったのだった。
その時、僕は脳外科の研修をしていて、入院してる小春を回診しては、無駄話をすることも多かった。
「亀山くん、ありがとう。血栓が飛ぶなんて、水分補給しっかりしなきゃね」
「原因はそれ?」
「多分。最近太ってきちゃったから。体調管理のつもりだったんだけどなー」
小春はかなり細い、太ってきたといっても、ほんの1キロ2キロ増えただけだったのだろう。
「アイドルにでもなるつもりかよ、あと、5キロくらいは増えていいんじゃないか。」
「それはちょっとなー。急に体重増えたら、それこそ病気になりそうだよ。」
僕は当然、医者としての心配もしていた。
「倒れた原因は違うところにあるかもしれないしさ、検査も兼ねて、ゆっくり休めよ。」
「そうさせてもらうわ。」
僕は、ため息を一つついて言った。
「ほどほどにしとけよ。疲れる前にちゃんと休むんだぞ」
「うん、大丈夫だよ、先生の言うことはちゃんと聞きますから」
そう言ってこちらも見ずに、にっこりと笑顔を浮かべ、楽しそうに本を開いて文字を追っている。
僕は、(そんなに医学書、面白くないんだけどなあ)と思いつつ、次の仕事に向かうのだった。
小春の様態が急変したのは、その日の深夜のことだ。
VIPルームの中は医師と、看護師が入り乱れ慌ただしい。当直の田中医師が心臓マッサージをしている。
「代わります」
状況がよく分かっていない自分が、体力のいる作業をした方が、合理的だと思った。
いや、それは後になって、つじつま合わせで考えたことで、あの時は、頭が真っ白になり、単純な処置しか思いつかなかった、というのが正直なところだ。
心臓を動かすための薬剤を入れ、AEDを使い、電気ショックを行った。しかし
「誰か、親族に連絡して」
と、どこからか声が上がった。彼女は北海道から、単身で新潟に来ている。医学生にはよくあることだ。僕のように地元で医者になる方が珍しいのだ。
「彼女、北海道出身です。近くに親類もいないと言ってました」
「そうか…、ルーカス(自動心臓マッサージシステム)用意して」
小春の心臓は、機械的に動く自動心臓マッサージ器に、胸部を1分間に100のペースで突かれている。若い病体である。
救命医療センターの医師も駆けつけた。適切な処置がとられていく。
主治医であった当時の医師は、学会で県外に出ており、その場にはいなかった。
1時間半後、
「
機械の作動音がやっと止んで、小春の心臓が解放された。僕はほっとした。
小春の体は、いろんな部位にコード、針、電極、チューブが
僕は途中から、
この長い時間、
「
そう救急救命医の医師が僕に告げた。
僕は、今までの小春との思い出が、頭の中でスライドのように思い出され、次第に顔がくしゃくしゃになり下を向く。
「ありがとう…ございました…」
感情が一気に
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