心霊スポットへ行く許可

 朝食が済み、主治医の回診を待っている。


 深夜の不思議な体験のあと、大六に今日の目的地を聞いただけで、直ぐに眠りに落ちてしまった。朝まで爆睡である。

 なので、どうやって強力な悪霊を捕まえるのかは聞けていない。

 目が覚めると、彼はどこにもいなかった。夢だったのか?とも考えたが、決してそうではない確信めいたものがある。


「調子はどう?」亀山先生がやって来た。


「調子はいいです……あのー…先生、実は……」


 とても言いにくかったが、夜の信じられない出来事を話してみた。


 ―――――


「うーん、そうなんだねえ、学生服の少年かあ。うーん…」


 流石さすが半信半疑はんしんはんぎ、いや、かなり信ぴょう性が薄れているようだ。俺はうつむき加減になる。


「で、どこにその強力な悪霊がいるんだろう?」


「…彼がいうには…6階の一番奥の部屋だそうです。俺も散歩していて、嫌な気配があったので、それ以来近づいてませんけど…」


「ほう!」


 亀山先生の表情が変わった。


「なるほどねー、そういうことなら…有りかもしれないなあ……」


 心当たりがあるようだった。俺は先生に聞いてみる。


「どういうところなんでしょう?彼からは何も聞いてないんですけど」


「まあ、いろいろとうわさのあるところだよ。でも、夜に行くとなると、ちょっと厄介やっかいだなあ」


⦅昼間でもいいぞ⦆


 背後から、大六の声が聞こえた。俺は振り返る。だが、そこには誰もいない。


「どうしたの?」と亀山先生が聞く。


「いえ…、急に彼の声がしたんです…。『昼間でもいい』……そうです」


「へぇー」


 亀山先生は、眼光がんこうを鋭くして、面白そうにこちらを見た。


「夕方でもいいのかな?3時から5時くらいの間でも」


 背後を振り返るが返事がない。


「返事はありませんけど、多分いいんじゃないでしょうか。…というかすいません。変なことばかりいって」


「いや、いいよ。僕も興味があるからね。楽しみにしてるよ」


 そういうと、亀山先生は回診に戻っていった。

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