大六の提案
〈!……、わかった〉
俺の口が、勝手にお
俺はベッドから出て、彼らの前に立つ。大六が言う。
〈こいつらの話を聞きたいのか?〉
〈そうだな、何で俺に
〈なら良い方法があるぜ〉
そう言うと、俺の
それは、今日、病院のエントランスルームで起きたのと、同じ現象だった。その対象が、この10体の幽霊に置き換わっているだけで、俺は一体一体が、ここに
――なるほど――、
それぞれに、思うところはあるようだし、解決してやれることも、結構ありそうだった。俺は心の中で、未成仏霊たちに語り掛ける。
〈みなさん、事情があるのはわかりましたけど…、でも俺は高校生ですよ。最後にお母さんに会いたいだとか、あいつを
力になれないことを、きちんと説明しようと思ったのだけれど、文句が止まらない。
〈
怒りが治まらなかった。未成仏霊全員に向かって言っていたが、一人一人に話しをするなら、まだまだ文句は山ほどある…。そんな俺を大六がたしなめた。
〈
涼しい顔で
その言葉と態度で、冷静さを取り戻した俺は、正座している彼らを、改めて見た。
ほとんどの霊は、涙を流して、申し訳なさそうにしている。
〈唯人が、こいつらの事情を感じたように、こいつらにも、唯人の言いたい事が伝わってるんだ。みんな、今は、生前の正気を取り戻している。そして死後の行いを反省している。お前にも分かるだろ。〉
確かに、反省の念が伝わってくる。これでこの人たちは、あの世に旅立てるのだろうか?
しかし、その中の1体は、まだ納得せずに、駄々をこねていた。大六が言う。
〈こいつは強制的にあの世に送るからな、頑固すぎる〉
〈……〉
仕方ないと思った。その幽霊は、頑として自分の考えを改めようとはしない。誰かが幸せになったり、世の中が良くなっていくような、筋の通った頑固さではない気がする。
〈そうだね……。頼むよ、大六…〉
そういうと俺の口から、またお経が唱えられ、抵抗する未成仏霊の周りに、無数の小鬼が表れた。小鬼たちは、
〈どこに連れて行かれるんだ?あの世っぽくない感じたけど。〉
〈普通に
考えを改めない霊を、暗いあの世に
大六が俺の体から離れる。俺は一気に疲労感が出て、ベッドに座り込んだ。大六が言う。
「……にしても、これじゃ切りが無いな。お前、またすぐに取り憑かれちまうぞ。そのたびに、こんな大掛かりなことしてたら、身がもたないだろ」
どこを見ているのか、病室の壁を
「どうすればいいんだよ。そういうのも抑えられないの?」
「そうだなぁ、俺もしょっちゅう来るの面倒くさいからなぁ…。結界でも張るか?」
「結界?そんなこと出来んの?」
「出来るけど、それには東西南北の四方に、
「今日は…暇じゃないと思う。安静にしてないといけないんじゃないかな?検査入院だから…」
「心電図だっけか?着けないといけないんだったな……。あの亀山って医者に、1日待ってくれって頼んでみろよ」
「亀山先生のことも知ってんの?」
「あぁ、見てたからな。なんだったら先生も誘ってやれ。面白いモノ見れますよって」
「そんなこと……言える訳ないよ……」
急激に睡魔が襲ってくる。大六はそれを察しているようだった。
「今日のところは、俺がいてやるよ。疲れてるだろうからな、ゆっくり休むといい」
「あ、ありがとう。何だかもの凄く眠い……。時間があったら、どこに何しに行くんだよ?」
「そりゃぁお前、悪霊を捕まえに行くのさ。柱になるような、強力な奴をな」
〝そんなこと出来るのだろうか?〟と思ったが、この日を境に、俺と大六の悪霊狩りは、本当に始まっていくのだった。
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