怪現象が起る家 ー霊視依頼ー

 しばらくして、泣きはらした子供のように顔を赤くした先輩は、幾分いくぶんか落ち着きを取り戻したようだった。そして、何かを決意したようにいう。


葦原あしはら君、一度私の家を見に来てもらえないかな?」


思いもしない申し出だった。


「先輩の家をですか?」


「そう、葦原あしはら君が見たの、私のお母さんだと思うんだ。葦原君が家に来れば、お母さんが何を言いたいのか分かるかもしれないと思って・・・。ダメかな?」


 少し考えた。本当にたまたま見えただけなのだ。面倒とかそういうことではない。先輩のためなら喜んで力を貸したかった。ただ、先輩の期待に応えるだけの結果が出せるか、自信がないのだ。


「行っても何も分からないかもしれないですよ。凄い力がある訳じゃないですし…」


「何も分からなくても仕方ないと思う。それでもいいの……。でも葦原あしはら君、凄いと思うよ。あんなに細かく幽霊の特徴がいえるんだもん。」


「本当にたまたまなんですけど……それでいいなら……」


「いいよ、見てくれるだけでも嬉しい。ありがとう。」


 さっきまで泣きじゃくっていた先輩に、いつもの笑顔が戻って、俺はほっとした。


「じゃぁ明日はどう?日曜日だけど予定あるかな?」


 急な話だったが特に予定は無い。翌日の日曜日、午前9時に岩城いわしろ駅に待ち合わせすることになった。若月先輩は


「これから学校に用事があるから」とコンビニをあとにする。


 不謹慎かもしれないが、その経緯がどうであれ、先輩の自宅に行けることに、俺の胸は高鳴った。

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