先行公開版から読んでいましたが、一連の事件が収束する様は待った甲斐がありました。
怪異に脅かされた人間が退魔を依頼し、事件を紐解く中で人間の異常性が浮かび上がる……という怪異譚はポピュラーですが、こちらはあちこちから非日常の匂いが立ち込めています。
不気味な舞台、追い詰められているのを差し引いても異様な依頼者、そして浮世離れした主役達。
あちらこちらがおかしい中で、それでも垣間見える日常と現実が、取り囲む異常と非日常の輪郭を一層際立たせます。
読み終えれば、それがただの異常と非日常ではなく、怪物の腹の中だと気づくわけですが……。
余談ですが、酒吞あとらがかき氷を頭痛一つ起こすことなくぺろりと平らげる様に、個人的な人外味を感じてお気に入りです。