緑の天使
だみあん
緑の天使
「緑のたぬき」
「君はいつもそれだね。もう付き合って何年も経つのに。」
「肉うどんばっかりのあなたに言われたくないわ。たまには赤いきつねにでもしたら?」
「楽に食べられるからって…美味しいけどさ。」
「最初の頃は私と一緒のがいいって緑のたぬきを食べてたのに…いつのまにかバラバラになってしまったわね、私たち。」
「近くて遠きは男女の仲とも言うからなぁ。」
「赤いきつね。」
「ねぇ、いきなりどうした?」
「食べたいの、あなたと。最後の晩餐として。もう私たち終わりにしましょう。」
「うどん?最後の晩餐が?それに別れるって・・・」
「手紙を書いたの。本当は逢わずに別れたかったんだけど、やっぱりあなたが好きだから・・・いつまでもこのままでいたくないの、私。」
「仕方なかったんだ。僕も君とのことを考えてたけど、お互い仕事が忙しくてそれどころじゃなかっただろ?」
「ロンドン、ニューヨーク、東京、梅田。エリートのあなたは会社に必要とされて忙しいんでしょうけど、庶民の私は日々の暮らしの為に忙しいの!」
「ノン、ノン!そんなことはないさ!君だって必要とされてるさ!」
「さらっとよくわからない返事をしないでよ。真面目な話をしているの!冗談で誤魔化さないで!」
「デートの時に冗談も言えない世の中じゃ・・・」
「やだ!本当に私は覚悟して今日を迎えたのよ!忙しいあなたに無理言って時間作ってもらって。」
「テルミン演奏会の後できちんと話をしよう。」
「うそ!?この話の流れでテルミンのほうが大事?」
「自慢じゃないが・・・」
「頑張ってもテルミンには勝てないのね、私。」
「知らなかったよ。ここまで君を追い詰めてたなんて。本当は今日言うつもりだったけど、もう少し早く言うべきだったかな。」
「な、なによ!あなたも私と別れるつもりでいたの・・・さあ、早く言ってよ!」
「よし、わかった。緑のたぬきを美味しそうに食べる君の笑顔をずっと見ていたいんだ!結婚しよう!」
「う、うん!」
緑の天使 だみあん @coldburn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます