✤ 28 ✤ 未来へ
「「ようこそ、お越しくださいました」」
アランくんの屋敷につけば、カールさんとシャルロッテさんが出迎えてくれた。
ミアちゃんは、広いお屋敷の中に入って、すごく興奮してる。そして、その後を、リュートくんを抱っこした日下部くんがついていく。
今日、未来に帰る話をしたら、ミアちゃんは、パパとママに会えると聞いて、とても喜んでいた。
やっぱり、本当のパパとママがいいよね。
ただ、少しだけ心配なのは、あの手紙の事があるから。
『育ててください』と書かれた、未来からの手紙。
もし、本当に私が、子供たちを捨てたのだとしたら、私は、絶対に説得しなきゃいけない。
ミアちゃんとリュートくんのためにも……
でも、まさか、アランくんが悪魔で、魔法を使って未来に行くことになるなんて思ってなかった。
正直にいうと、急な話で戸惑ってる。
説得の言葉なんて、何も考えてないよ。
あと、これには、お父さんが、すごくショックを受けていた。
だって、タイムマシンは完成してないわけで、可愛い孫たちとも、お別れすることになっちゃったし。
お父さん、寂しそうだったなぁ。
それに、私だって寂しいよ。
ミアちゃんとリュートくんとサヨナラするのは……
「アリサちゃん!」
「彩芽ちゃん」
屋敷には、すでに彩芽ちゃんと威世くんもついていた。そして、日下部くんたちが、私から離れた瞬間、彩芽ちゃんが、私のもとに駆け寄ってきた。
「いよいよだね」
「うん」
時空を行き来するって、どんな魔法なんだろう?
未知の世界すぎて、よく分からない。
でも、アランくんは、魔法使いとしても、とても優秀みたいだし、日下部くんもついてきてくれる。あんなに頼りになる二人がいるんだから、きっと、大丈夫だよね。
「彩芽ちゃんは、威世くんと待っててくれるんだよね。ミアちゃんたちを送り届けたら、すぐに戻ってくるからね」
「うん、待ってる」
彩芽ちゃんと、手をとりあって、笑いあう。
実は、あれから彩芽ちゃんと二人だけで話をしたの。
私は、彩芽ちゃんも、アランくんが好きなんだと思っていたけど、本当は、アランくんを好きだったわけじゃなく、アランくんの正体を知っていたから、私の気持ちを知って、心配になっちゃったみたい。
でも、そうだよね。
だって、相手は悪魔なんだもの。
だから、あんなに困った顔してたんだね。
しかも、三角関係は、完全に、私の早とちりだったみたい。
なんと、彩芽ちゃんには、他に好きな人もいたの。
それは、アランくんの親友でもある、威世 颯斗くん。
彩芽ちゃんが前髪をとめているブルーのヘアピンも、威世くんからもらったもので、その話を聞いた時は、二人で恋バナで盛り上がっちゃった!
私も、彩芽ちゃんの恋は、しっかり応援して上げたい。それに、お互いに内緒にしていたことも打ち明けたからか、私たちは、前よりも仲良くなった。
きっと、この先も、ずっと彩芽ちゃんと仲良くできる気がする。それが、今は、凄く嬉しい。
「みんな、お待たせ」
すると、二階からアランくんがやってきて、彩芽ちゃんから手を離す。
優雅に屋敷の階段を下りとくるアランくんは、相変わらず、王子様みたいにカッコイイ。
……て、本当に、王子様なんだった!
魔界のだけど!
「準備ができたなら、さっそく始めようか。日下部くんだっけ。君もくるんだよね?」
「あぁ、恋ヶ崎さん一人に、ミアとリュートのお守りは荷が重いだろうし」
「そうだね、時空も渡るわけだし。じゃぁ、このリボンを腕に付けて」
「リボン? なんで?」
「時の
なんか、めちゃくちゃ怖いこと言ってる!!
時の狭間ってなに!?
アランくんの話では、魔法は、便利ではあるけど、それと同時に危険も伴うものでもあるんだって。だから、魔法を使う間は、アランくんの指示に、必ず従うよう注意を受けた。
「よし。じゃぁ、みんな繋がったね」
すると、日下部くん、リュートくん、ミアちゃん、私と順にリボンを結んだあと、アランくんは、最後に自分の左手にリボンを結び、首にかけていたネックレスを服の中から取り出した。
そのネックレスの先には、本の形をしたペンダントがついていた。そして、その本が、あっという間に、分厚い魔導書に変わった!
すごい! まるでマジックみたい。
でも、明らかに魔法だと分かる。
そして、アランくんが魔導書を開くと、また、どこからか風が吹きはじめた。
「じゃぁ、行こうか、20年後の未来へ」
アランくんの言葉に、私は、キュッとミアちゃんの手を握りしめた。リュートくんも、日下部くんがしっかり抱きしめてる。
すると、アランくんは、魔導書に手をかざし、呪文を唱え始める。
『時の神よ。我が血の
すると、広い屋敷の床に、大きな魔法陣が現れた。
私たち五人を、すっぽり囲うくらいの青白く光る魔法陣。ミアちゃんたちが来た時に見えた、あの光は、やっぱり魔法陣のものだったんだ!
その後、その魔法陣が、パァァァっと光り出した同時に、私たちは風に飲みこまれた。そして、うっすらと目を開くと、私たちは、もう時空の中にいた。
まるで星空のような世界を、船に乗って進んでいく。いや、進むと言うよりは、流させていくような感覚。
時間が進むにつれて、景色が映画みたいにきりかわっていく。すごく、綺麗で不思議な感覚。
「ママ、お空、キレイ~」
「うん、まるで、星の中を飛んでるみたい」
「もうすぐ、着くよ。僕につかまって」
ミアちゃんがはしゃぐ中、アランくんが私に手を差し出した。
もう、着くんだ。
私はゴクリと息を飲み、言われるまま、アランの手を取った。すると、私と手を繋いだミアちゃんが、次に日下部くんと手を繋いだ。
そして、次の瞬間、ひときわ眩しい光に包まれると、私たちは、暗い空間から、突然、明るい場所に出る。
突然の浮遊感。未来についたのかな?
私は恐る恐る、目を開く。
だけど、そこは──空の上だった。
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