✤ 27 ✤ タイムワープの真実


 し、してない?

 そう言われて、私は目を見開く。


 あれ? アランくんじゃないの?

 でも、ミアちゃんは


「おい! ミアは、お前に飛ばされたって言ってるんだぞ」


「知らないものは、知らないよ。僕が、ミアちゃんに会ったのは、昨日が初めてだし」


 私に代わって、日下部くんが、アランくんに問いかけた。だけど、アランくんは、本当に知らないみたい。首をかしげて困ってる。


 あれ~? なんで!?

 もしかして、ミアちゃんが勘違いしてるとか!?


「というか、仮に僕がやったのだとしたら、それは、ってことじゃないの?」


「「えぇ!?」」


 アランくんの言葉に、私と日下部くんは、同時に驚いた。でも、確かに、アランくんとは限らないよね!?


 それに、本当に、20年後のアランくんがしたのだとしたら、今のアランくんが分かるわけないし!


「ご、ごめん! アランくん!」


「うんん。僕の方こそ、おどすようなことしてゴメンね。もし、魔族が絡んでるなら、見過ごすわけにはいかなかったから」


「うんん。私もいきなり呼び出して、変なこと聞いちゃったし! でも、どうしよう。これじゃ、ミアちゃんたちを未来に帰す方法が……っ」


 もし、未来のアランくんが、タイムワープさせたのだとしたら、うちのお父さんがタイムマシンを完成させたって話は、完全にだったってことだよね?


 どうしよう! 私、思いっきり『お父さんならできる!』って応援しちゃったのに!?


 それに、タイムマシンができないなら、どうやって、ミアちゃんたちを未来に帰せばいいの!?

 

「未来に帰したいの? なら、僕が手伝ってあげようか?」


 瞬間、私がアランくんが、私を見つめながら、そういって


「え、アランくんが?」


「うん。多分、未来の僕は、"時空飛行の魔法"を使って、ミアちゃんたちを、過去こっちに飛ばしたんだと思う。なら、僕が同じ魔法を使って、帰してあげればいいだけだよ」


「そ、そっか……!」


 アランくんって、本当に魔法が使えるんだ。

 それに、手伝ってくれるなんて、やっぱり優しい。


 悪魔って言うから、すごく怖い存在を想像してたけど、きっとアランくんは、優しい悪魔なんだ。


「ありがとう。お願いしていいの?」


「うん。いいよ。僕も嬉しかったし」


「嬉しかった?」


「うん、悪魔だって知っても、僕のことを信じてくれたでしょ。恋ヶ崎さん、そんなに僕のことを、大切に思ってくれてたんだね」


「っ!?」


 瞬間、アランくんが優しく笑って、私の両手を掴んだ。包み込むようにキュッと握りしめらろて、心臓のドキドキが一気に加速した。


 あ、あれ? なに!? どうなってるの!?


「あ、あああ、アランくん、手が……っ!」


「おい、嫌がってるだろ」


「え、嫌だった? ていうか、キミ誰?」


 日下部くんが、アランくんの手を、無理やり私から引き離す。すると、アランくんは、不機嫌そうに日下部くんを見つめた。


 そういえば、この二人、初対面だよね!

 めちゃくちゃ、最悪な初対面になっちゃったよ!?


 でも、その後、なんとか場を収めて、私たちは、彩芽ちゃんと威世くんも交えて、5人で話をした。


 子供たちのことや未来のこと。

 私たちが知ってることは、全部話した。


 そして、それから、一週間後──


 私たちは、ミアちゃんとリュートくんをつれて、再び、アランくんの屋敷にやってきた。


 それは、夏休みに入って、しばらくたったある日。


 私たちは、ミアちゃんとリュートくんを、未来に帰すことになった。

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