✤ 21 ✤ 未来が変わったら


「わぁ~~! この服、かわいい~!」


 その後、家に帰ると、みんなで作った子供服をみて、ミアちゃんが盛大に喜んだ。


 プレゼントボックスの中には、可愛いくてオシャレな洋服が4着。


 その中でも、私のロングスカートをリメイクして作った、チェック柄のワンピースが気に入ったみたい。ミアちゃんは、早速、着てみたいとはしゃぎだした。


「見て見て! ミア、かわいい?」


「うん! めちゃくちゃ、かわいい~」


「あ! これ、リュートとおそろい!」


「うん、そうなの! 同じ生地で、作ったスタイなんだよ~」


 ミアちゃんが、ワンピースとお揃いのスタイを見つけて、リュートくんに手渡した。

 すると、リュートくんは、スタイをおもちゃだと思って、にぎにぎして遊んでる。


「リュートくんも気に入った?」

「ぅまー」


 かわいいなぁ。

 こんな姿を見てると、すぐに顔が緩んじゃう。


「アリサ! これ、本当に中学生が作ったのか!? それも男の子が」


 すると、アランくん達が作った服を見て、お父さんが感心したように呟いた。


「本当だよ! アラン君も威世くん、凄いんだから!」


 もう、いつか二人で、子供服のブランドでも立ち上げてほしいくらい?

 あの二人だったら、絶対、素敵なお店を開ける!


「ほぅ、これは素晴らしい出来だ! きっと、小さい頃から、裁縫をつづけてきたんだろうな~」


「小さい頃から? そうなのかな?」


「そうだろう。どんなことも、長く続ける分だけ、実力がついていくものさ」


「へー」


 確かに、すぐにできるようになるわけじゃないよね?

 アランくん達が、ここまで出来るようになったのは、好きな裁縫を、ずっと続けてきたからなのかな?


(そういえば『気持ち悪い』とか『女々しい』って言われるって言ってたなぁ)


 そんなに心ない言葉を浴びせられても、アランくんたちは、自分の『好き』や『楽しい』って気持ちを貫いたんだ。


 だから、あの二人は、あんなにカッコイイのかもしれない。


 人って簡単に周りにながされちゃうし、自分の意志を貫くって、けっこう難しいことだもの。


「それより、アリサ。なにかお礼は考えたのか?」


 すると、お父さんが、また話しかけてきて


「うん。考えたよ! うちのカフェで販売してるお菓子を、たくさんつめあわせて持っていこうかなって。それに、ミアちゃんたちが着てるところも見てもらいだいし、明日は、ミアちゃんたちを連れて、お礼しに行ってくるね」


「そうか、それはいい」


「ママ! 私たちも行っていいの!」


「うん。お菓子を渡しにいくだけだけど、明日は、リュートくんとミアちゃんと3人でお出かけしよっか!」


「やった~」


 私が笑えば、ミアちゃんは、両手を上げて喜んだ。

 明日は、ちょうど海の日で祝日だし、お礼するなら、早い方がいいよね?


 あ。リュートくんは、ベビーカーに乗せていこう。でも、出かけるから、オムツとかミルクも持って行った方がいいよね? あとは──


「そうだ。ミアちゃん、お出かけする時は、ちゃんと私の言うことを聞いてね。道路に飛び出したり、勝手にいなくなったりしちゃだめだからね!」


「うん! わかった!」


 よし、いい返事!

 ミアちゃんは、お利口さんだから、きっと大丈夫だよね?


 今日は、嬉しかったり、楽しかったり、ドキドキしたり、色々あったけど、すごく充実した一日だった。


 また、みんなでお裁縫できたらいいなぁ。


 それに、アランくんには『嬉しかった』って言われちゃった。今、思い出してもドキドキしちゃう。


 このまま少しづつ、アランくんと仲良くなれたら、いつか告白もできるかな?


(あ、でも、私……っ)


 だけど、その瞬間、20年後のことを思い出した。


 未来の私は、日下部くんと結婚してるんだよね?


 じゃぁ、告白しても、私はアランくんに、ってことかな?


 そう思ったら、一気に気持ちが暗くなった。


 でも、彩芽ちゃんも、アランくんが好きかもしれないし、他にも、アランくんのことを好きな人は、きっと、沢山いるよね?


 なら、私がフラれるのは、当然かもしれない。


 それに、万が一、未来がかわったら、ミアちゃんとリュートくんは、どうなっちゃうの?


 私が日下部くんと結婚しなかったら、二人は、いなくなっちゃうの?


(それは、絶対にダメ……っ)


 ミアちゃん達がいなくなる。

 そう思うと、急に怖くなった。


 きっと、過去を変えてはいけない。

 今がかわったら、未来もかわっちゃう。


 そしたら、不幸になったり、消えてしまう人も現れるかもしれない。


 じゃぁ、この気持ちを持ち続けるのは、いけないことなのかな?


 アランくんを好きでいるのは、ダメなこと?


 じゃぁ、諦めた方がいいのかな?

 アランくんのことを──


 だって、そうすれば、誰も傷つかないもの。


 日下部くんも、彩芽ちゃんも、ミアちゃんとリュートくんも。


 私が、この気持ちをなくしさえすれば、全部丸く、おさまるのかな?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る