✤ 19 ✤ アランくんのお屋敷


 夏休みを目前に控えた、7月中旬。


 あれから、あっという間に日曜日がきて、アラン君のと約束の日がやってきた!


 今日は、いらなくなった服を持ち寄って、みんなで一緒にリメイクをするの!


 そして私は、彩芽ちゃんと一緒に、アラン君の家に前に立っていた。


 前から思ってたけど、アラン君の家って、とっても豪華なんだよね?


 外国の映画に出てくる、お城みたいなお屋敷。門構えもしっかりしてるし、扉をあけたら、執事でも出てきそう!


「アリサちゃん、緊張してるでしょ?」


 すると、屋敷のインターフォンの鳴らしたあと、彩芽ちゃんが、そういった。


「き、緊張するに決まってるでしょ! 私の服、変じゃないかな!?」


「うん、大丈夫。アリサちゃん、赤が似合うし、とっても素敵」


「ホント! 嬉しい!」


 彩芽ちゃんの言葉に、ほっとする。

 でも、私より、彩芽ちゃんの方が素敵だよ!


 ちなみに、私の服は、白のブラウスに赤いフレアスカート。そして、彩芽ちゃんは、ブルーのワンピースを着てる。


 夏らしく爽やかな色合いが、彩芽ちゃんらしくて、とても上品。それに、前髪をとめているヘアピンが、とってもオシャレなの!


「そのヘアピン、手作り? すっごく可愛い」


「へ!? あ、うん、手作り……っ」


 すると、彩芽ちゃんが、急に赤くなった。


 あれ?

 もしかして、誰かからのプレゼントとか?


(そういえば、彩芽ちゃんは、アラン君のこと、どう思ってるんだろう?)


 そのヘアピン、アラン君から、もらったのかな?

 それに、あの時、困った顔したのは、なんで?

 やっぱり、好きなの? アラン君のこと……


 気になることは、いっぱいあるのに、結局、聞けないまま、ずっと悩んでる。


 だって、もし本当に、彩芽ちゃんがアラン君を好きだったら、今の関係が壊れちゃいそうで……


 ──ガチャ。


「「ようこそ、お越しくださいました」」

「!?」


 すると、突然、屋敷の扉が開いた。


 両開きの重厚な扉。それを開いて現れたのは、なんと、若くてカッコいい執事さんと、人形みたいに美人なメイドさん!


「「お待ちしておりました、彩芽さん、アリサ様」」


 執事とメイドの二人が、声をそろえてお辞儀をする。

 もう寸分の狂いもなく、まるで双子みたいに。


「こんにちは、カールさん、シャルロッテさん。アラン君から聞いてますか?」


「もちろんです。今日は、子供服をリメイクなさるそうで。アラン様は、二階でお待ちですよ。どうぞ、中へ」


 彩芽ちゃんが、執事さんと話をする。

 でも、私はその隣で、あんぐりと口あけて、驚いていた。


 だって、執事だよ!

 しかも、メイドさんもいるんだよ!

 私、こんな光景、漫画でしか見たことないよ!!


「あ、ああ、彩芽ちゃん! もしかして、アラン君は、どっかの国の王子様なの!?」


「え!? 王子様?」


「だって、執事とメイドがいるんだよ! しかも、本物!!」


「ふふ、確かに、カールさん達は、アラン君に仕えてるけど。でも、この二人は使用人というよりは、家族かな?」


「家族?」


「うん。アラン君のお母さん、小さい時に亡くなってるの。それに、お父さんは、遠い国で暮らしてるから、アラン君にとって、カールさんたちは、親代わりみたいなものなのよ」


「……そうなんだ」


 ちなみに、執事の方がカールさんで、メイドの方がシャルロッテさんらしい。

 

 二人とも、容姿端麗で、とても若い。


 親というよりは、お兄ちゃんとかお姉ちゃんの方がピッタリなくらい。


 でも、アラン君は、この二人を家族のように思っていて、この広い屋敷で、三人だけで暮らしてるんだって。


 でも、まさか、アラン君のお母さんが亡くなっていて、お父さんは外国で暮らしていたなんて……そんな話、全く知らなかった。





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