第13話コミュ障改善に向けて

「ま、まさか同居までしているとはねー」

「まあ落ち着けよ」


まりんにばれてしまったので、弁明のために仕方なく家に上げた。

リビングに行き机を挟む形で、俺が胡桃沢の隣に座り、まりんは俺たちの正面に座っている。


「お、落ち着いてるけど?」

「目が泳いでるぞ。なんで尋問する方がきょどっているんだ」

「む……! お兄ちゃんのいじわる、私がコミュ障なの知っているくせに」


もちろん知っている。

意地悪しているのを自覚しているから罪悪感を感じるが、まりんに主導権を握られるとめんどくさい方向に進みかねない。

だからごめん。意地悪します。


「知っているがな……これを機に克服はできないか?」

「克服?」

「コミュ障治したいとは思っているんだろ?」

「……まあできれば」


まりんも人が嫌いなわけじゃない。

ただ自意識過剰になっているというか、苦手なだけで話したいとは思っている。と思う。


「ていうか、今の状況と関係ある―? この話」

「あるぞ。もう認めるけどな、俺と胡桃沢は同居しているんだよ」

「……それお母さんたちには言ったの?」

「いや、言ってない」

「まあ言わない方がいいかもね。お父さんにまたいろいろ言われそうだし」


まりんは親には言わないでくれるだろう。

特に父さんには絶対にばれたくはない。


「お父さんに言われるって、嫌なこと?」

「あ、あなたには関係ないからー」

「関係あるわ、彼女だし」

「彼女だからなに? ていうか彼女ってなに?」


あー言っちゃう感じなのね。

胡桃沢の発言を聞いたまりんは、鋭い眼光で俺を睨みつけてくる。

おお怖い。なぜかまりんの周りに黒い靄が見えてきて、圧がすごい。


「……実は付き合ってるんだよ。胡桃沢と」

「は、はあ!? なんでよ。お金の関係じゃなかったのー?」

「最初はそうだったけどいろいろあって」

「そうよ、もう大人の関係なの」

「ふ、ふざけないでよ!」


声を荒げて机をばしばしと叩き、なんでなんでなんでと繰り返し唱えている。

いつもはいい子なのに、今日はやけに怖いな。


疲れてきたのか、勢いのあった台パンも徐々に収まってきた。

息を切らしてながらゆっくりと顔を上げた。


「はあはあ……どうしてつ、付き合ったの」

「どうしてかって言われると……なりゆきで」

「同居している間に、亮くんが私に惚れてしまったの」

「ど、どこに惚れる要素があるのかしらー?」

「おい、そういうこと言うのやめろって。惚れちゃったんだから仕方ないだろ」


惚れる要素はたくさんある。

見た目もそうだし、中身は……だいぶぶっとんでたけど今は好きだ。


「……もういい。でどうすんのー?」

「どうすんのとは?」

「親に説明することよ」

「あー……内緒にしてくれないか?」

「いずればれるのにー、分かった」


根は素直な子なんだ。

だから、今回のことも分かってくれた。

今度なんか奢ってやろう。


「ねえ」

「ん、なんだ」

「ばれちゃまずいの?」

「まあ……俺条件付きで一人暮らししてるから。女性と付き合っているどころか、同居していることがばれるとやばい」

「そうなのね、詮索しない方がいいのかしら?」

「今度話すよ」


今は話したくないかな。

いろいろとめんどくさい部分もあるし。

それに今は目の前に別の問題がいるから、そっちを対処しないと。


「べ、別にその女に話さなくてもいいのにー」

「まあまあ、仲良くしてくれよ。友達ができるチャンスだろ?」

「いらないし」

「あら? 友達いないの?」

「いらないの!」


この二人が友達みたいに仲良くなってもらえれば、俺と胡桃沢の関係も認めてもらえるし、まりんもコミュ障が少しは改善するかもしれない。

お兄ちゃんとして、頑張ってみるか。


「まりん、いらないことはないだろ? 昔は友達いたじゃないか」

「でももういらないのー!!」

「そんなこと言うなよ、胡桃沢も友達になってくれるよな?」

「私としてもまりんちゃんとは仲良くしたいと思っているけど……」

「おー! じゃあ二人でちょっと話してみて――」


乾いた音が部屋に響いた。

机から身を乗り出して、まりんは俺の頬を叩いた。


「放って置いてよ! もうお兄ちゃんなんて大っ嫌い!!」


そういうと扉を思いっきり開けて、出ていってしまった。

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月10万円で同級生女子と同居することになりました @itsuki07222

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