第12話気まずい

停学の不幸な出来事と、と彼女ができたことによる幸福によってプラマイゼロになった俺は、嬉しさで悶えることもなくソファーで寝転んで暇を過ごしていた。


時刻は午前六時。

目覚ましはかけてはいなかったが、謎に目が覚めてしまった。

当然、胡桃沢も起きているわけもなく、暇なのでとりあえず体を起こすことに。


起きていつも通りコーンスープを飲むと、頭がだんだん冴えてくる。

冴えてくると昨日の出来事を思い出した。

我ながら恥ずかしい真似をしたなと思う。

両思いとかじゃなかったら、気持ち悪がられただろう。


ちなみにファーストキスだった。

胡桃沢はどうなのだろうか。

美人だし、俺が初めてな訳ないか。


なんて考えていると、足音が聞こえてきた。

どうやら胡桃沢も起きてきたらしい。


「……おはよう」

「お、おはよう」


……なんか気まずい。

どうしよう、何か話題がないかと探しているとあることに気づいた。

胡桃沢の目の下に、クマができていた。


「あれ、眠れなかった?」

「まあね。いろいろ考えることもあるのよ」

「……もしかして昨日のこと?」

「……そうかもしれないわね」


俺の質問に目を逸らしながら、答える胡桃沢。

やっぱ気にしてたのか。

そう思うと照れてしまった。


「何顔赤らめてるの」

「お前もだろ」


お互いに赤い顔を指摘した結果、また気まずい雰囲気が流れる。

やばい、こんなだったっけ。

俺は話す内容はないが、とりあえず雰囲気を変えようと思って声を出そうとするとーーインターホンが鳴った。


「……あー俺が出てくるわ」


胡桃沢の返事を待たずに扉を開けて、玄関に向かう。

朝っぱらから誰だろうと、疑問を持ちながら扉を開けた。


「お兄ちゃん元気ー?」


かつての敗者、妹がそこに立っていた。


「……何しにきたの」

「停学になったんでしょー? だったら暇じゃん」

「暇じゃないよ」


暇だけど今まりんと会うのはまずい。

まりんは俺が胡桃沢と付き合ったことを知らない。

まあ知っているのは、俺と胡桃沢の2人だけなのだが。


「えーうそー? 絶対暇じゃん。だから中に入れて?」

「だめだ。帰ってくれ」

「やだー!」


そういうと俺を押し退け、強引に中に入ろうとする。

やばい、止めないと。


「おいやめろって。いい加減にしろ」

「なんで? なんか隠しているの?」

「なにも隠してないから帰れ」

「絶対嘘だ! だって――なんでいるの……」


何かを言いかけたまりんは奥にあるものを見つけて驚愕した。

俺は後ろを振り返ると、胡桃沢が立っている姿を目撃してしまうのだった。

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