愛犬アニーと愛猫もも

春秋 頼

第1話愛犬アニーと愛猫ももとの想い出

記憶を想い出として残すためここに記す。



 2018年4月21日 愛犬アニーの人間に例えると85歳の誕生日だった。翌日、心不全で逝った。

私の心に、優しさと穏やかさと安心を与え続けてくれた存在。

頭も賢く、よく目で周りの様子を見ていた。優しい子で、大型犬なのに小型犬を怖がる臆病な子だった。



 よく漫画などで、犬がうなるシーンを目にするが、アニーは生涯で一度しか、うならなかった。

シャンプーに行ってきて、オシャレに首にピンクのスカーフを巻いてもらって帰ってきていた。

私は頭を撫で、苦しくないのかな? と思い、ゆるめるつもりで、ちょっとだけ引っ張った。本当に小さくうなった。

私はビックリしたが、人間同様、お気に入りはあるのだろうと思った。



 綱引きが大好きだった。

月並みだが、もっともっと遊んであげていれば、もっともっと撫でてあげていればと、思ってしまうが、そうではない。

私が遊びたいし、撫でたいだけだ。あの嬉しそうな目が、私は大好きだった。



 私がトイレに入ると、廊下をカツカツと歩いてきて、ドアの外でよく寝ていた。

浴室から出ると、寝ていたのに起きて近くで待ってくれている事も多々あった。

おやつはもちろん大好きだったけど、愛情を求める素敵な子だった。

私の父親が居間にいる時は、気を使うように私をよく見ていた。

気持ちが通じ合えていると、何度も思った。

 悲しみはもちろんあるが、最後まで頑張って生きてくれた。

私はアニーにしっかりと、“愛”を伝えることが出来たと思う。それが大事なことだと思っている。



 息を引き取る寸前に、私はアニーに呼びかけるチャンスがあった。声をかけ、いつものように胸を撫でると、ピクッと反応してくれた。息も絶え絶えで苦しそうにしていた。私は顏を近づけて小声で「もういいよ。今までありがとう」と私の気持ちを伝えた。さすっていたお腹が段々と冷たくなっていくのを感じた。人間の言葉が本当にわかる子だった。



 私の部屋まで聞こえていた、アニーの吠える声が聞こえることはもう二度とない。

 ありがとう。私は今、涙を浮かべ、君を懐かしみながら笑顔でこれを書けている。

 


 彼女はよく頑張った。最初は食欲が落ち、息も荒くなっていった。呼吸が乱れ、寝付きも悪くなった。

 尻尾を振る元気もなくなり始めたが、たまに頑張って食べ物を食べてくれた。



 私はもっと生きてくれると思っていたが、一昨日、私が思う以上に無理してくれていたと分かった。

 毎日のように、私は彼女の頭やお腹を撫でていた。それは日課だった。私も彼女も知っていた。

 まず頭をしばらく撫でると、体を横に倒し、お腹を撫でてくれと、彼女はいつもせがんできた。

 アニーはなぜか、お腹より、人間でいう胸あたりを撫でて欲しがる。そこを撫でると、手の肉球を当てて私に触れてくる。それも日課だった。


 一昨日は、横に倒した体を、少ししかたっていないのに、体を元に戻した。それほど呼吸が苦しいのか……と私は思った。

昨日は体を横に倒さなかった。だけど、今日だとは思わなかった。

それくらい辛いのを分かってあげられなかった、私が情けない。

 辛そうに寝息をたてて寝ている時は、撫でるのを我慢した。


今夜からはもうアニーはいない。それは言い表せないほど寂しい。

もしも、天国があり、話すことができるのなら、手を触られることを何故あれほど嫌がるのか、いつの日か聞いてみたい。

この手紙をもし、読めるのなら、たまにでいいから私を思い出してほしい。

アニーは今、大好きだったソファで永眠についている。


私の夢は、日本でも海外でもいいから、広々とした緑で少しでも自由を味わえるよう、過ごさせてあげたい。それだけで十分幸せを感じられるだろう。


 モモは近所に捨てられていた。黒猫で人懐っこい優しい子だった。

私の部屋のドアをよくカリカリして入れてほしいと言うから入れてあげても私がそばにいないとすぐに出ていく子だった。


 一夜だけ一緒に寝たことがある。私が寝返りをうったのか夜中に目が覚めるとモモが私を見ていた。モモの気持ちを一番理解してあげれたのは私だろう。

私以外の部屋に入れてほしいということは無かった。


 ある日の夜、私は使用のためモモを入れてあげなかったが、その日はかなり粘っていた。

次の日、モモは死んでいた。私はそれを考えるといつも罪悪感しか感じない。

人間は言葉を話すから気持ちを伝えやすいが、自分は分かってあげられなかった。


 アニーとモモは私に“愛情”という気持ちを教えてくれた。

悲しみは大きいが、それ以上のものを私に与えてくれた。

あるわけないが、いつか逢いたいとしか思えない。涙は流れるが、どうにもならない世界の話だ。


アニーが最初うちに来た時は、ソファのひじ掛けくらいの

大きさだった。小さくてかわいいおとなしい子だった。

私が頭を撫でると気持ち良さそうにしていた。

モモも猫であるがお腹を撫でて欲しがる時もよくあった。


アニーもモモもしばらく撫でてあげると

お返しに私の指や手をなめてきていた。

二人とも何故か最初は手をなめてきていた。

しばらく手をなめると、次は必ず顏をなめられた。


私的には顏を舐められまくるのは苦手であったため

しばらく舐めてもらうと「ありがとう もういいよ」と

言ってやめさせていた。


それぞれに自分の場所があった。

アニーはソファと檻の中が好きだった。檻が好きだったのは

臆病な性格だったからだ。私が二階に下りて

檻の目の前にある洗面所にいくと必ず出てきていた。

私を部屋に戻させないようにするため三階にいくための

階段までいつもついて来ていた。


寂しさをしっかりと私に伝えれる子だった。

人間よりも分かりやすい行動でいつも示していた。


そしてソファに私が座ると、その上に乗ってきていた。

小さい頃から大きくなるまでの時間は早かったが

それが彼女の日常だった。


私がソファから移動しようとすると体を動かして

動けないようにさせられた。

何とも愛くるしい要求を彼女は色々な行動で示してくれた。


私は生と死が必ず訪れることは理解している。

言葉と意味を理解していても、想い出と悲しみは

私の中から消えることはない。


悲しみは大きい。

しかし、それ以上に二人との想い出は多い。

想い出が多いだけに悲しみも深くなる。


それは私にとってあの子たちがどれほど大切であったかが

考える必要などないほど目を閉じるだけで

あの日々が私の全てを満たしていく。


私は親とは不仲だった。それは異常すぎるものであった。

親は早寝だったためそれぞれ寝室に入ると

私は階下に降りてアニーとソファに座り撫でてあげた。


綱引きが好きでよくせがまれた。上限がないほどずっと

せがんできていた。私はそういう時はおやつをあげた。

アニーもおやつには勝てないためすぐに大人しくなっていた。


大型犬用のガムなどもすぐに食べてしまうため

私は親が与えているおやつではなく

自分で二人のためにどれが一番いいか試しながら

買い与えていた。


やはり好みがあるのだろうと思える物を見つけ

それをおやつとしてあげていた。


ある日、私が洗面所に行って片手を下にさげても

アニーがいなかった。


檻を見てみるとその中で寝ていた。

非日常な現実が私を襲った。

私は歯磨きを終えると、檻の中で寝ている

アニーの頭を撫でた。いつもは起きるはずなのに

お腹を撫でても起きることはなかった。


人間と動物には似た行動が幾つもある。

アニーがもうそんな年齢なんだなと私は思った。

悲しいが誰にもどうにもできない。

覚悟はしていたが、悲しみの深さはそれが起こるまで

知ることはできない。


書いているだけで想い出がよみがえる。

あんなに楽しかった日々だったのに

何故か最後を思い出す。一番悲しかった日を考えるだけで

涙が出る。


止めるには他の事を考えなければ止まる事は無いが

とめたいとも思わない。自分で分かっていたつもりでも、

複雑な物語の涙が止まることはない。

私に幸せを運んでくれたあの子たちに出逢えた事は

後悔はしないように何に対してでも

正直な自分であることをする意味の深さを

教えてくれた。


また逢いたいと心から思うのはあの子たちだけだ。


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愛犬アニーと愛猫もも 春秋 頼 @rokuro5611

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