子供の頃、得てして兄の存在のあり方は、歳の差を誇示する傲慢さと、弟を守るという使命感とがない交ぜになった、不思議でどこか微笑ましい、無邪気さを携えている。
大人になると悲しいかな、その微笑ましさや無邪気さは、照れ臭さというもどかしい感情の向こう側に、姿を眩ませてしまう。
でも、本質は変わらない。
兄と弟。
ふとしたきっかけで二人きりになれた瞬間の、〝普通〟という言葉を中心に展開されるダイアログの中で、その本質は、顔を覗かせる。
この物語の中には、そんな兄弟の、もどかしくも尊い距離感が詰まっている。