ぼすちゃんのかていほうもん

ぼすちゃんのかていほうもん……って知ってますか?


ぼすちゃんは、

〝伊佐菜〟が姓で

〝ぼす〟が名前の

幼い幼い女の子です。

黒い黒い魔女のような帽子を被って

黒い黒いポンチョを着ていて

白い白い顔で

大きい大きい目で

いつもいつも笑っています。


ぼすちゃんはいずれあなたの街にも行きます。

ぼすちゃんはまだまだ本当に幼い幼いので

人間をめちゃくちゃにするのが大好きです。


眼球に縫い針をぶっ刺し

喉元にフォークを突き立て

骨を一本ずつ折っていき

その残骸を食べるのが彼女の日課です。

それを小さな小さな身体で

一生懸命がんばっているのです。


ぼすちゃんの容姿は教えたので、それをよく覚えていて下さい。

そしてもし、街中でぼすちゃんに会ってしまったら……

絶対に目を合わせないで下さい。

目を合わせたら、その人がまず最初のターゲットになります。

そしてぼすちゃんに背を向けて、走って逃げて下さい。

絶対に振り向いてはいけません。

走っていく様子をぼすちゃんはじーっと見ています。

でも、見られているからといって、最初のターゲットになることはありません。

それに、街にぼすちゃんが来たら、その街の人間は全員いずれはターゲットになります。

逃げることで、ぼすちゃんをくぐり抜ける準備をする時間を稼ぐのです。


家に帰るまで振り向かずに逃げたら、まずカーテンを閉めて下さい。

電気を消し、外から見えることのできない個室に隠れて下さい。

しばらくするとインターホンが鳴ります。

ぼすちゃんです。

絶対に出ないで下さい。

でも、しぶといぼすちゃんは、家のドアにへばりつきます。

そして「ぁ……あぁ……ぁぁぁ……」と、言葉も話せないので赤子のようなことを言います。

それに反応してはいけません。

ドアを開けたら最期です。

絶対に自分が家にいることを悟られないように、

少しも音を立てずにじっとしていて下さい。


やがて声は聞こえなくなります。

ぼすちゃんが行った証拠です。

でも、ぼすちゃんが街から出るまで油断しないで下さい。

声が聞こえなくなってからぼすちゃんが街を出るまで

耳の中でぼすちゃんの声が木霊します。

それに驚いて物音を立ててしまったら、ぼすちゃんがそれに気づきます。

絶対に音を立てないで下さい。


ぼすちゃんが街を出て、ぼすちゃんの声が聞こえなくなったら悪夢は終わりです。

安心して下さい。

でも、もし家のドアの前に縫い針が落ちていたら、絶対に触らないで下さい……。







***







……もしぼすちゃんがあなたの街に来たら。

このエピソードの言う通りにして下さい。


最後に。


最初も言いましたがぼすちゃんのフルネームは〝伊佐菜ぼす〟です。

〝伊佐菜ぼす〟を英語にしてみましょう。


ISANABOSU


これをひっくり返して、そのまま読んでみましょう。


USOBANASI


うそばなし


嘘話


見事にひっかかりましたか?

今回はヒントが隠れてあったからいいけれど、もしかしたらあなたが今信じている話は嘘話である可能性もあります。

くれぐれも気をつけて下さいね!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

これが、小学生クオリティ── あんかけ(あとち) @Ohoshisama124

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ