第16話
ジリリリリとなったので、目が覚める。
ベットから降りて、日付と時刻を確認する事にした。日付は、7月7日の日曜日となっていて、時刻は八時となっていた。今日は、日曜日なので、学校に行く事はないので、制服に着替える事は無かった。パジャマ姿で、そのまま部屋を出て、リビングに向かう。リビングに向かうと、エプロン姿の水無月文香さんが、朝食を作っていた。
「あら、おはよう、あかね」
「おはよう」
「今日も休日だって言うのに、起きるの早いわね、あ、もしかして……」
「な、何?」
「昨日、電話がかかってきたでしょ? 孝之君の事で早く起きたのかな?」
「ち、違うよ、たまたま目覚ましが鳴って、起きただけだって」
「そう? まあいいけど……あ、そろそろ朝食できるわよ? パジャマ姿でいないで、着替えなさい」
「は~い」
そう言って、自分の部屋に戻る。
部屋に戻り、白いパジャマを脱いで、下着姿になり、箪笥から服を選ぶ。何にしようかと考えて、サマーTシャツと白のスカートを履く事にした。着替え終わって、リビングに戻る。
リビングに戻ると、朝食ができていた。
今日の朝食は、トンカツ定食みたいな感じで、結構なボリュームがあり、ものすごくおいしそうだった。
「あ、あかね、着替えてきたのね? じゃあ、頂きましょう」
「うん、頂きます」
そう言って、朝食を取る。うん、マジで美味い。料理上手だな……と、物凄く感心してしまった。あっという間に食べ終わって、自分の部屋に戻る。これから何をしようか……と考えて、部屋の中をチェックする事にした。
部屋の中にあるのは、ベットと机、それに鏡面台に箪笥があり、箪笥の上にぬいぐるみがあったりしている。机の中を覗いて見ると、鉛筆やメモ用紙、あとアクセサリーが入っていた。
アクセサリーの形が、ハートの形だったので、えらくかわいい趣味だな……とか思ってしまった。そして鏡面台の上にブラシとヘアバンドが置いてあったので、ヘアバンドを頭に装着してみて、鏡を見てみる。
そこに写っていたのは、ヘアバンドをつけた水無月あかねの姿で、かなりかわいく見えている。やっぱり美少女だよな……と、思ってしまった。そんな感じな事をしていると、文香さんが部屋の外から、こう言って来た。
「あかね~? ちょっと来てくれる?」
「な~に?」
そう言って、部屋を出て、文香さんの所に行く。文香さんは、別の部屋の中にいて、手に何か持っていた。
「あかね、これ、着てくれないかしら?」
「これって?」
「これは、浴衣よ? 今日、お祭りでしょ? この浴衣があかねに似合うと思って、探してたのよ? じゃあ、着てくれる?」
「……う、うん」
文香さんがそう言ったので、断ると怪しまれるので、仕方がなく浴衣を着る事にした。着ている服を脱ぎ、下着姿を文香さんに見られる。うわ、なんか恥ずかしいな……下着の色が黒なので、余計に恥ずかしく感じてしまった。文香さんが浴衣の着付けが出来るみたいで、素早く浴衣の帯を結んでくれた。
「あら、とってもお似合いよ? あかね」
「ありがとう……」
出来上がったのは、黄色い浴衣姿の俺だった。
そうか、水無月あかねって、黄色ってイメージなのか……浴衣に着替え終わって、これからどうしようかと悩んでいると、ピンポーンと鳴ったので、外に出てみる。外に立っていたのは、主人公の初崎孝之だった。
そうか……予告どおりに誘いに来たって感じだな?
「おはよう、あかねちゃん、あ、その着物、もしかして俺のために?」
「そんな訳じゃないです!」
「そう? でも、よく似合ってるよ、じゃあ、行こうか?」
なんか、行く事がもう決定済みらしかった。
ここで断ったら、またループが発生すると思われるので、不本意だが……俺は、こう言う。
「……はい、行きましょう」
「よし、じゃあ、出発~」
そう言って、手を握って来て、手を繋ぎながら、町の中へと向かったのだった。手を繋いで歩いているからか、これじゃあ逃げられない……この状態で、バットエンドにしなくちゃいけないんだよな……? 一体どうすればいいんだ?町の中を手を繋いで歩く。この姿を他人から見たら、思いっきりデートって感じじゃあないのか? しかも俺は、母親の文香さんに浴衣を着せられたので、浴衣姿になっているしな? これは、他人から見たら完璧にデートに見えると思われる。
とりあえず俺は、主人公にこう言ってみる。
「あの……手を離してくれません?」
「なんで?」
「なんでって……恥ずかしいですし」
「俺は、そうでもないよ? あかねちゃんと手を繋いでいたいしね」
「は、はあ……」
こりゃ、何を言っても無駄だな……と、思ってしまった。町の中を歩いて、お祭り会場に辿り着く。時間がお昼ぐらいなので、人もそんなに多くなく、けど、屋台はもうすでにやっていた。
「あかねちゃん、何から食べようか?」
孝之がそう言って来たので、俺は、冷たい物が食べたくなったので、こう言ってみた。
「じゃあ、カキ氷が食べたいです」
「かき氷だね、じゃあ探してみよう」
カキ氷の屋台を探す。屋台は、早く見つかり置いてある商品は、イチゴ味、メロン味、レモン味、宇治金時味、サイダー味の五種類だった。
「どれにする? あかねちゃん」
「え~っと……じゃあ、メロンでお願いします」
「メロンだね、すいません、メロンとイチゴを下さい」
孝之がそう言うと、屋台のおばちゃんが「はいよ!」と言って、メロンとイチゴ味を出してくれた。カキ氷を受け取ると、屋台のおばちゃんがこう言って来る。
「君たちカップルかい? 若いっていいわね~」
「はい! カップルというか、妻にしたいです」
おい! いきなり爆弾発言しなかったか? こいつ!?何で彼女じゃなくて、いきなり妻宣言してるんだ、こいつは!
「そうかいそうかい、二人ともお似合いよ?末永く仲良くね」
お似合いって言うなああああ!! 屋台のおばちゃんの言葉にすっかりと、動揺してしまった俺がいた……
「じゃあ、あかねちゃん、食べよっか?」
「は、はい……あの……さっきの言葉って……ほ、本気ですか?」
「え? もちろん本気だけど?」
最悪だ……真顔でそう言っているので、とてもじゃないけど、嘘をついている感じが全くしなかった。しかも、何か言っていると思ったら、「子供はそうだなあ二人ぐらいはほしいな、男の子と女の子の両方がいいかも……」そんな事をブツブツ言っている。不味い。非常に不味い……奴は本気みたいだ……これを了承しちゃったら、主人公と性行為をやる羽目になる訳で……そうなったら、俺が子供を生む羽目になるって感じだし、なんとしてもバットエンドにならないと!!でもどうやったら、バットエンドになるんだ……? と、考えていると
「あれ? あかねちゃん、食べないの?かき氷、溶けて来てるよ?」
「あ、はい、ちょっと考え事してて・・・」
そう言って、俺はカキ氷を食べる。冷たいカキ氷は、結構美味しく、頭が少しキーンとなった。カキ氷を食べ終わり、二人で屋台を見て回っていると
「あ~!孝之!見つけた!」
そこに現れたのは、孝之の幼馴染の西村舞先輩だった。これはもしかして、バットエンドに出来るチャンスか!? と思い、早速俺は西村先輩に声をかける。
「西村先輩、こんにちはです、私、孝之先輩に誘われてここに来たんです。丁度いいですから、一緒に見て回りませんか?」
「あ、あかねちゃん? 二人で来てるのに? 何で舞を誘うの?」
「駄目ですか……?」
俺は、孝之に向かって、泣きそうな顔(もちろん演技)をしたら、主人公はうろたえて
「わ、解ったよ、あかねちゃんがそう言うなら」
「ありがとうございます!先輩!」
「孝之~? 何で、あかねちゃんと手を繋いでるの~? 私も、手を繋いでもいいよね~?」
そういって、西村舞は主人公の手を繋ぐ。右手が俺で、左手が舞先輩と繋いでいた。うん、何だこの状況……? ま、これで何とか二人っきりなる事はないので、俺はこう決める。
「主人公と西村舞をくっつけよう」と思ったのである。これが成功したら、もしかしたら……バットエンド確定となるので、俺は、頑張る事にしたのであった。
お祭り会場には、俺と主人公と舞先輩と、手を繋いで歩く羽目になった。
うん……何なんだろ? この状況……とりあえず、孝之の顔をうかがってみると、なんかニヤケていた。まあ、こんな美少女二人と手を繋いで、歩いているのだからそう思うのも、無理がないと思われる。ちなみに俺の服装が、黄色の浴衣姿で、舞先輩は赤い着物を着ていたりしている。胸のサイズが俺と違うので、舞先輩が歩くたびに胸が揺れているので、まわりから見てみれば、貧乳と巨乳の美少女二人が、男と手を繋いで三人で歩いている状態になっていた。
まわりの男の視線が、物凄く睨まれている感じがするのは、気のせいか……? 屋台が出ているので、見回っていると
「あかねちゃん、何を食べる?」
孝之がそう聞いてきたので、俺はと言うと
「じゃあ、焼きそばが食べたいです」
「焼きそばだね? じゃあ、買ってくるよ」
「あ、私も行くわ」
「いいよ、舞とあかねちゃんは、そこで待っていて?」
そう言って、孝之は俺達から離れて、行ってしまった。ここはチャンスか? と思い、舞先輩に話しかけてみる。
「舞先輩、ちょっと話したい事があるんです、いいですか?」
「私も話したい事があったのよ、丁度いいわね? あかねちゃん……」
舞先輩が話したい事? 一体何なんだ?
「舞先輩が話したい事って、なんですか?」
「とっても重要な事なんだけど……孝之の事、好き?」
「嫌いですが?」
俺は、即答で答えると、舞先輩は驚いていた。
「え? そ、即答……?」
「さっきだって、屋台のおばちゃんに私の事を妻にしたいって言ったんですよ? 私、このままじゃ先輩に結婚してくれって言われる可能性大です……あの、先輩、孝之先輩の事好きですよね?」
「う、うん……好き」
「だったら、もっと行動してください、なんなら私が手助けしましょうか?」
「い、いいよ……自分で何とかやってみるし」
「そうですか? じゃあ、私は途中で一旦消えますから、あとは、二人で頑張って下さい。今日はせっかくのお祭りですし、告白とかして、キスとかすればいいと思います。その現場を私が見たら、二人ともお幸せに!って大声で言いますので」
「ええ!? ちょっと、恥ずかしいなあ……それ……」
「そうでもしないと、本当に私……先輩の物にされちゃうんです、お願いします、舞先輩!」
舞先輩は、う~んと言いながら考えた後、こう言った。
「う、うん、分かった、頑張ってみる……」
「決まりですね? じゃあ、よろしくお願いします」
そう言っていると、孝之が袋を持ちながら、帰ってきた。
「お待たせ、あかねちゃん、舞、あかねちゃんをいじめてないだろ~な?」
「そ、そんな訳する筈ないでしょ!」
「そうですよ、先輩、ちょっと舞先輩と女の子同士の会話をしてただけです、ね~? 舞先輩」
「え? ええ、そうね……孝之、何か文句あるわけ?」
「い、いや……あ、はい、あかねちゃん、頼まれた焼きそばだよ」
「ありがとうございます」
そう言って俺は、先輩から焼きそばをもらって、休憩スペースで食べる事にした。食べ終わって、スピーカーから、花火の打ち上げを行いますと、聞こえてきた。
「花火だって、見に行こうか? あかねちゃん」
「あ、はい」
「花火か~、楽しみね~」
花火の時間か……これはチャンスか?
そう思ったので、歩きながら、俺は舞先輩に小声で話し出す。
「じゃあ、私は少し消えますので、舞先輩、頑張って下さい」
「う、うん……」
舞先輩が、そう言ったので、俺は、さっそく実行に移す事にした。
「あ、私、トイレに行ってきますので、先に行ってて下さい」
「着いてってあげようか?」
「結構です、舞先輩と先に行ってて下さい」
「ほ、ほら、孝之、あかねちゃんがそう言ってるんだから、行くわよ」
「お、おい、腕を引っ張るなよ?」
「じゃあ、行ってきます」
そう言って俺は先輩達から離れて、本当にトイレに向かった。女子トイレの中で、数分時間をつぶし、花火のドーンと言う音が聞こえたので、そろそろいいかな? と思い、女子トイレから出て、花火会場に向かった。
数分歩いて、花火会場に向かい、先輩達を探してみると……丁度、二人がキスをしている場面だった。これは舞先輩が、主人公に無理やりキスしている感じだな?って思った。
他人のキスシーンを見てて、ちょっといいな……とか思ってしまったが、その考えをやめて、先輩達にこう言う。
「孝之先輩……」
「あ、あかねちゃん!? こ、これはその、舞が勝手に!」
「いいんです、解ってますよ、孝之先輩には舞先輩がお似合いです! 二人ともお幸せに!」
そう言って、泣く演技をしながら、花火会場を出る事にした。
「ま、待って! 俺が好きなのは、あかねちゃんだ!」
「駄目、孝之は私と付き合うの!」
「ま、舞、離せ! てか……関節を決めるな! 痛いだろ!」
「孝之……あかねちゃんに妻になって欲しいって言ったんだって?……私……私が孝之の妻になるよ、こ、子供だって産んであげるし……だから、結婚しましょ? 孝之」
「そんな事を言うなあああ」
そう孝之が叫んでいたが、俺は無視して、家に戻る事にした。水無月家に戻ると、文香さんがこう言ってきた。
「あら? あかね? 一体どうしたの? 息を切らして」
「は、走ってきたから……」
「なんで? 孝之君は?」
「孝之先輩は、幼馴染の舞先輩と付き合う事になったの……」
ここは泣きそうな演技をしたら、それっぽく見えるのだろうか?そう思った俺は、文香さんに
「うう……やっぱり……幼馴染の舞先輩の方が似合うもん、だから……私は諦めるの……」
「……そう、あかね……振られちゃったのね? かわいそうに……」
そう言って、文香さんは抱きついてきた。
抱きつかれて恥ずかしかったが、なんか気持ちよかったので、そのままでいると、意識が遠くなっていって、完全に記憶を失ってしまった。
そして……
気がつくと、俺は知っている場所にいた。
この知っている場所と言うのは、自分の部屋だったのである。布団にテレビに本棚、水無月家のあかねの部屋にあった鏡面台が無く、あるのは勉強机だった。
「も、戻った……?って、声が!」
声が男だった頃の声に戻っているので、あわてて体を確認してみると、股間に男のシンボルがちゃんとあったので、男に戻ったんだと嬉しくなった。
「やった~! 戻った~……ん……待てよ? という事は、あの世界は一体……?」
俺は、まわりを確認してみると、テレビ画面にこう書かれていた。
「GAMEOVER」と表示されてあり、メッセージ欄が出ていて「コンテニューしますか? YES NO」と、表示されている。
「もしかして、ここでYESを選択したら、またあの世界に戻るのか……?」
そう思ったので、答えを「NO」にして、素早くテレビの電源を切った。ゲーム機の電源も落として、中を開けてみると、そこには……「ラブチュチュ」と書かれていて、表紙が水無月あかねとなっていたのである。
俺は、このソフトを戸棚の奥に封印する事にして、やらないと決めたのであった。
~Badend~
気がついたら、攻略されそうです。 レイド @reidsann
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