264坂 そうか、バレンタインデーか

 うん?


 女子高生が男子高校生に何かを渡したぞ。


 て。


 ああ、チョコか。


 そういえば今日はバレンタインデーか。


 俺には無縁のものだから、まったく考えてなかったな。




 ガララ─────。




 ビン底メガネをかけたブタがスケボーにのって坂道をおりてきた。


 きょろきょろ周りを見ながら、やけにゆっくりおりてくるな。


 もしかして、誰かがチョコをくれると思って期待してるのか。


「……」


 まあいい。


 運がよければもらえるさ。


 俺はいつもどおり仕事だ。




「おはようございます! 先輩!」


「え? 文芸部時代の、美由紀くん?」

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