192話目 中間テスト②
昼食を食べ終わり、愛と一緒に古典の勉強を始めた。
……1分も経たずに、愛は船を漕ぐ。
このまま寝かしてあげたい。
でも、愛に起こしてほしいと頼まれている。
気づかなかった振りをしよう……純がソファの背もたれに体を預けて眠っていた。
愛を純の隣に移動させて、純の頭を愛の肩にのせたい。
僕の百合心が噴火しそうになるシチュエーションで今すぐ実行したい。
……愛との約束の方を優先しないと。
愛の脇と足を軽く擽る。
眠りが深いのか起きない。
ブラックコーヒーを愛の前に置く。
口を開いたから、ストローを指して愛の口に近づける。
チューチューと飲む姿が、授乳されている赤ちゃんみたいで可愛い。
飲み終わった愛は小さくゲップをした。
目覚めることはない。
1時間ぐらい寝かせておこう。
純と視線が合う。
遊んでほしそうに見つめてきた。
「じゅんちゃん遊ぶ?」
「おう」
「何して遊びたい?」
「何でもいい」
庭の方を一瞥する純。
「外で遊ぼうか?」
「おう」
愛がいつ起きるのか分からないから、自宅の庭で遊ぶことにしよう。
純と話し合ってキャッチボールをすることになった。
母の部屋からボールとグローブを持って庭に行く。
ここからだと寝ている愛を見られるな。
純と適当に距離をとって、対面に向かい合いボールを投げる。
純の投げるボールは早くて重いけど、慣れてきたので少し手が腫れる程度で済む。
数分投げ合っていると、純が耳を少し赤くして口を開く。
「……恋愛相談していい?」
手に力が入らなくなる。
持っていたボールが足に落ちる。
「こうちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
心配させたくないから平然を装っているけど、悶えてしまいそうになるぐらい痛い。
「じゅんちゃんの……好きな人の名前を教えてほしい」
『そいつのことを今から抹消しにいくから』
本音を必死に抑える。
「じゅんちゃん! 好きな人ができたの! らぶは全力で応援するよ!」
窓から顔を出した愛が純の方に向かって大声を出す。
「お姉さんがじゅんちゃんの恋を実らすよ!」
愛はソファに座って、両隣をバンバンと叩く。
僕達は靴を脱いで、窓から上がり愛の隣に座る。
「じゅんちゃんは誰が好きなの?」
愛は純に顔を近づけながら聞く。
「……私じゃなくて、私の友達の恋愛相談」
盛り上がっている愛に申し訳なさそうに純はおずおずと答えた。
友達の話だと言って、実は本人のことだったと言うことは漫画でよくあるシーン。
でも、純が嘘を吐いていないことは分かる。
純は嘘を吐くと片言になってしまうけど、今はなっていないから。
よかったー。
本当に純に好きな人ができてなくてよかったー。
安心して小さな溜息をする。
「らぶはお姉さんなのに、1度も恋愛相談をされたことがないよ! いいな! じゅんちゃんいいな! らぶも恋愛相談されたいよ!」
立ち上がった愛は小さく地団太を踏んでいる。
「らぶがじゅんちゃんの友達とその友達の好きな男子を両想いするよ! らぶが頼りになる所を見せるよ!」
片手を挙げた愛は元気よくおー! と言った。
僕も純の友達に協力することにした。
恋愛相談の内容を聞く。
恋愛経験がほとんどないし、男女の恋愛には全く興味がない。
役に立てるか不安だけど、今まで恋愛相談を受けてきた経験を活かそう。
「友達の好きな人は男子じゃなくて女子」
「じゅんちゃんの友達が男子ってこと?」
「私の友達も女子。女子が女子を好きってこと」
愛と純のやりとりを聞いていて、一気に興味とやる気が出てきた。
男女の恋愛はどうでもいいけど、女子同士の恋愛は興味津々。
本命は愛×純だよ!
浮気じゃないから。
心の中で意味の分からない言い訳をする。
「友達は同性だから告白したいけど、躊躇っている」
「好きなら好きって告白すればいいよ!」
愛の言うことはもっともだけど、誰もが愛のよう迅速果断できるわけではない。
純は愛から僕に視線を向けた。
「その2人のことを教えてもらっていい?」
「おう。分かった」
当人同士のやり取りを見ることで、その2人が結ばれるかどうかなんとなく分かる。
そんな僕から見て、幼馴染達は全く付き合いそうにないから辛い。
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