73話目 大きな幼馴染は寝込みを襲う?

 土曜の朝、平日と同じ時間に目が覚めた。


 日曜に買い出しに行っているから、自分が使っていない部屋の掃除は土曜にしている。


 もう少し寝ても時間の余裕はある。


 目を瞑ろうとしていると、玄関が開く音が微かにしたので急いで目を瞑る。


 ほとんど足音は聞こえないけど、気配が近づいてくるのが分かる。


 ドアが開く音がしてから、その気配は僕の真横で止まる。


 薄目を開けと、そこには予想通り純がいて僕の手を凝視している。


 甘えていい宣言をした次の日から、休日になるときている。


 純の手が徐々に僕の手に伸びていき、指先を伸ばせ触れる所で止まる。


「……こうちゃん」

「……」

「……こうちゃん、起きてる?」

「……」


 僕の顔を見ながら純は呟く。


 今起きたことにして、それから純が満足するまで甘やかしたい。


 いつもはそうしている。


 でも、どうやって純から甘えてくるのかも気になる。


 このまま寝たふりを続けよう。


「いつもこうちゃんから手を繋いでくれるから、今日は私からこうちゃんの手を繋ぐ。よし、繋ぐ……起きている時は絶対に無理だけど、寝ているこうちゃんと手を繋ぐのも緊張する」


 純は指先を動かすけど当たらない。


 体感時間で数分ぐらい経った頃、やっと純の指先は僕の手に届く。


「こうちゃんの手、温かい」


 強張っていた表情がほぐれているように見える。


 純から触ってきたのは初めてだから、感動して声を上げそうになるのを我慢。


 最初は指先で手の甲を優しくなぞる程度。


 少しして慣れてきたのか軽く手を握ってきた。


 手の温かさに包まれて気持ちよくて眠気が増す。


 もう少しで眠りにつきそうになっていると、純の顔が近づいてくる。


 キスをしようとしている?


 このままキスをされても嫌な気持ちにはならないけど、純には愛がいるから僕にキスをしては駄目。


 いや、これはこれでありなのかもしれない。


 僕と純がキスをしている所を見て、僕に嫉妬した愛が純をめちゃくちにする所を見たい。



『じゅんちゃんはどうしてこうちゃんにキスをしたの?』

『……』

『らぶの唇でじゅんちゃんの浮気性の唇を満足するまで塞いであげるよ!』

『……らぶちゃん、恥ずかしい』

『恥ずかしいのは最初だけだよ! じゅんちゃん目を瞑ったら駄目だよ! 目を瞑らずにらぶのことだけを見て!』



 愛に純を見下ろしながら言ってほしい。


 愛と純の百合カップル以外の他の存在は必要ない。


 純のキスを避けるために寝ている振りをやめようとしていると。


「……こうちゃん……私、我慢できない」


 切ない声を出して僕の目の前まで顔を近づけて……首元に顔を埋めた。


「こうちゃんの匂い安心する……スーハ―、スーハ―。……癖になる。スーハー、スーハー」


 そのままの体勢で純は何度も深呼吸を始めた。


 擽ったくて体が少し動くと、純が凄い勢いで離れていく。


「……こうちゃん……もしかして起きてる?」

「……」

「……こうちゃん?」

「……」


 純が僕の匂いを嗅ぎたいなら、このまま寝たふりをしよう。


 起きて嗅いでいいよと言っても、純は恥ずかしがってしないと思うし。


 一歩歩いては僕の名前を呼んでくる純が可愛くて抱きしめたいけど耐える。


 再び僕の首元に顔を埋めた純は何度も深呼吸をする。


 されることが分かっていたら体を動かすことを我慢できる。


「……こうちゃんの、匂い、好き」


 匂いだとしてもここまではっきりと純に好きと言われるのは嬉しい。


「……こうちゃん…………の、匂い…………だ、いすき……………」


 目を少し閉じていき純は小さく寝息を立て始めた。


 僕も目を閉じてこのまま寝ることにしよう。


「こうちゃんおはよう!」


 元気溌剌な愛の声が聞こえてくる。


 眠た過ぎて挨拶を返すことができない。


 足音が近づいてきて、ベッドの前で止まる。


「じゅんちゃんもきてたんだね! 2人の寝顔を見ていると……らぶも眠たくなってきたよ……」


 お腹に重みを感じて目を開けると、愛の頭がお腹に乗っていた。


 愛がこのままでは風邪を引くかもしれないから、純の隣に寝かせる。


 2人が抱き着き合った所を見て興奮した。

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