49話目 大きな幼馴染と目力の強い女子のお見合い?
愛の体調がよくなったから、愛と純を百合カップルにする作戦を再開。
純と女子の中でもっとも純が好きそうな目力が強い女子を仲良くさせて、愛を嫉妬させる。
この作戦を成功させるためには色々と行動しないといけないことが多い。
昼休みになってすぐに椅子から立ち上がり教室から出る。
最初に向かうのは2階にあるコンピューター室。
部屋をノックする。
たれ目の女子が出てきた。
「もしかして、BLに目覚めて入部しにきましたか?」
「僕はらぶちゃんとじゅんちゃん専門の百合好きだから入部しないよ」
「そうですか。残念です。何か用事ですか?」
「今日、らぶちゃんと一緒に弁当を食べて欲しいんだけどいいかな?」
「いいですよ。神絵師様にランイしますね」
机に置いていたスマホをいじりだすたれ目女子。
「神絵師様が一緒に食べてくれると言ってくれたので、神絵師様の教室に行ってきます。みんな神絵師様のクラスの1年4組に行くよ」
部屋から垂れ目女子を合わせて5人の女子が出てきた。
「小泉様とお楽しみください」
去り際にたれ目女子は腐った目でそう言う。
勘違いしていることは分かるけど訂正しない。
次に1年1組に向かう。
目力の強い女子は女子達に囲まれて談笑をしていた。
教室に入り、近づくと目力の強い女子と視線が合う。
目力の強い女子は顔を青ざめさせて、僕が入ってきた出入口とは逆の後ろ側から出て行く。
このまま逃げ続けられたら、愛と純を百合カップルにする作戦を進めることができないから追いかける。
「何で追いかけてくるのですか?」
「話したいことがあるからだよ」
「そう油断させておいて、人のいない所に連れて行き暴力を行い傷物にされるのですよね! わたくしそんなの嫌ですわ!」
「しないから。じゅんちゃんのことで話したいことがあるんだよ」
距離を離されてもう少しで見失いそうだったけど、目力の強い女子は立ち止まり僕の方を振り向く。
「王子様ことで話したいことって何ですの?」
「それは」
「おい。お前、この前はよくも馬鹿にしてくれたな!」
角刈り男子現れて最後まで言うのを邪魔された。
男子ごときが邪魔をするなと叫びたいけど……我慢。
これ以上目力の強い女子を怖がらすのは得策ではない。
「ごめん」
嫌々頭を下げる。
「分かってるならいい。今度から矢追たんに近づくなよ」
「は? らぶちゃんに近づくなって、お前は何様のつもり!」
調子に乗る角刈り男子に苛ついて思わず本音が出た。
角刈り男子はそれだけのことで尻餅をついて涙目になる。
目力の強い女子は声を殺して泣いていた。
今何を言っても聞いてくれる気がしないから一旦引く。
去り際に本当に余計なことをしてくれたなと思って、角刈り男子を睨む。
角刈り男子は「ひぃっ」と悲鳴を上げながら僕と逆方向に逃げる。
教室に戻って弁当を持ち校舎裏に行く。
純が地面に座り建物にもたれながら音楽を聴いていた。
近づくとイヤホンを外して立ち上がる。
「じゅんちゃん遅くなってごめんね。らぶちゃんは部活の人と一緒に食べるから、僕とじゅんちゃん2人で弁当食べようか?」
「おう」
純の隣に腰を下ろして弁当を渡す。
弁当を開きながら純に問いかけてみる。
「じゅんちゃんって女子と話したりする?」
「ない」
「全く?」
「おう。クラスの男子とは体育の時にたまに話す」
純と話した男子を消し炭にしてやろうか。
ではなくて、純が目力の強い女子のことをどう思っているか聞かないと。
目力の強い女子の名前って確か鳳凰院だったよな。
「鳳凰院さんって知ってる?」
「知らない」
「じゅんちゃんのファンクラブに入っていて、目力の強い女子なんだけど知らない?」
「知らない」
「そっか」
純と目力の強い女子を仲良くする前に、純が目力の強い女子のことを知ることが先だな。
★★★
放課後チャイムが鳴ってすぐに1年1組に行くけど目力の強い女子はいない。
ランイで剣に部活に行くのが少し遅くなると送る。
学校中はだいたい探しつくしたけど、目力の強い女子はどこにもいない。
後探していないのは運動場。
運動場に行くと、運動部が活動しているけど目力の強い女子はいない。
もしかしたらもう帰ったのかもしれない。
まだ探していない所が浮かんでそこに行く。
木陰に隠れた目力の強い女子が純にスマホを向けている所を見つける。
逃げられないように足音をできるだけ消して近付き……目力の強い女子の手を摑む。
「キ」
悲鳴を上げられそうなので口を塞ぐ。
僕の手に涙が当たる。
「何もしないから叫ばないで」
頷いたから口から手を放すと、地面に仰向けで倒れて両手両足を開く。
「犯すなら優しくしてください」
「本当に何もしないから」
「嘘ですわ! そう油断させてわたくしが無防備な所を犯すのですよね?」
「犯さないから。落ち着かないと、じゅんちゃんに勝手に写真を撮ろうとしていたことを言うよ」
「はい、落ち着きますわ。だから、絶対に王子様に言わないでください。何でも言うこと聞くのでお願いしますわ」
「とりあえず立ち上がって」
「はい。分かりましたわ」
変に説明するより行動した方が早い。
目力の強い女子の手を摑んで純の所に行く。
向かう途中「写真のこと言うつもりですか。嘘を吐きましたね」と小声で言われるけど無視。
「じゅんちゃん、鳳凰院さんが友達になりたいんだって言ってるよ」
目力の強い女子の手を放して、純の方に向かって背中を押す。
「あわわわわわわわわわわ」
目を大きく開いて小刻みに震える目力の強い女子は分かりやすく動揺している。
「鳳凰院さん自己紹介したら」
「はひ、そうれふね。ほうお、ういん、れい、かです、わ」
小刻みに震えながら目力の強い女子は言う。
「私は小泉純」
「ご、ご趣味を何ですか?」
「音楽を聴くこと」
「……」
「……」
お見合いみたいな会話が終わり、2人は黙る。
「鳳凰院さんはじゅんちゃんのどんな所が好きなの?」
このままにしていても会話が弾まないので話を振る。
「王子様のいい所を語れば長くなりますがあえて一言で言うなら、押しつけがましさのない優しさですわ」
目力の強い女子の震えていた体が落ち着き、目を細めて優しい表情をして純のことを見る。
「子どもの頃から男子に絡まれることがあって、その都度誰かが助けてくれました。でも助けてくれた人は『何かあったらまた助ける』と言う人ばかりですわ」
小さく溜め息をする。
「善意で言われていることは分かります。でも、わたくしはそれが嫌で嫌で仕方がありません。誰かの助けなしじゃ生きていけないって言われているみたいに感じますから」
なんとなく目力の強い女子の言いたいことは分かる。
「だから、わたくしは1人で絡んできた男子を追い払おうと思いましたわ」
でも、と言いながら視線を下ろす。
「何を言っても駄目でした。そのうちわたくしの手を無理やり握ってこようとして本当に怖くて……。そんな時に王子様が現れて男子を追い払って、その場を去っていきましたわ」
顔を上げて真直ぐに純の顔を見る。
「初めてわたくしを弱い者扱いせずに助けてくれたことが本当に嬉しく感じました。あの時のお礼を言うのが遅くなって申し訳ございません。ありがとうございました」
深々と頭を下げる目力の強い女子の頭を撫でようとして手を挙げるが空中で止まり、僕の方を一瞥してくる。
頷くと純は目力の強い女子の頭を丁寧に撫でる。
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます」
純は目力の強い女子の頭を撫で続けて、目力の強い女子は純に感謝を言い続けた。
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