48話目 大きな幼馴染の父

「こうちゃんおはよう!」

「ぐはっ‼」


 お腹に衝撃受けうめき声を出す。


 目を開けると、制服姿の愛と純が僕のお腹に頭を乗せていた。


 愛の顔色はいいけど一応熱を測るために愛の額に手を当てる。


 平熱みたいで安心していると、立ち上がった愛が言う。


「こうちゃん! 早く学校行こうよ!」


 目が半分閉じている純を愛がここに連れてきているということは、寝坊したんだな。


 純の頭をそっとベッドに下ろす。


 僕の下着姿を見るのを恥ずかしがる純は寝ているから、ここで着替え始める。


 愛は僕の下着姿を気にすることなく話しかけてくる。


「こうちゃんは何で急いでるの?」

「学校に遅刻しそうなんだよね?」

「遅刻?」

「遅刻しそうだったから、じゅんちゃんを連れて僕の家に迎えにきてくれたんじゃないの?」

「違うよ! らぶが元気になって、学校に早く行きたいからきたんだよ!」


 スマホで時間を確かめると5時過ぎ。


 日が昇るのが早くて外が明るいから、まだこんな時間だとは思わなかった。


「今から学校行っても誰もいないよ」

「いなくていいよ! 学校で朝ご飯食べようよ!」

「先生達がまだきてないからまだ学校の中には入れないよ」

「行くの! 今すぐ学校に行くの!」


 床でピョンピョンと跳ねる愛。


 元気な愛を見つつ、今から何をするか考える。


 朝食と弁当の準備を手伝ってもらうのでもいいし、外を軽く散歩するのもいい。


 そういや、熱が出ている間は僕と愛で毎日している勉強ができていない。


 中間試験は全部返ってきて愛の平均は40点で、最低点は英語の30点だった。


 最初は28点で凄く冷や冷やして答案を何度も見て教師の採点ミスを見つかり30点になる。


 もう少ししたら期末テストだから、中間より範囲が広いから愛が欠点をとる可能性が増えてくるからどうにかしないといけない。


「らぶちゃん勉強しようよ」

「いいよ! 学校に行く時間までたくさんしよう! 今日のらぶは途中で寝たりしないよ!」


 リビングに移動して、勉強を始めて1分後。


「……まだまだ勉強するよ。むにゃむにゃ」


 机に頭を乗せて寝言を言う愛だった。


 抱っこしてソファに運び毛布をかける。


 僕もまだ眠たいからソファの空いている所に腰をかけて目を瞑る。


 目を開けると愛が寝ていたから起こさないように立ち上がる。


 時間は6時過ぎ。


 キッチンに行き食パンを青汁で流し込んで食べて弁当を作り始める。


 弁当が作り終ってから、琴絵さんに連絡するとワンコールで出る。



『幸君おはよう! どうしたの?』

「おはようございます。らぶちゃんが僕の家にきているので、このまま一緒に登校しますね」

『愛ちゃんと今日から同棲するのね。ママは大賛成よ』

「そうじゃなくて、らぶちゃんが朝早くに」

『言わなくていいわよ。ママは分かっているから。大丈夫よ。愛ちゃんの持ちものを運ぶのはママとパパも手伝うから安心してね。運ぶって言っても、家が隣だから着替えぐらいで大丈夫よね。こうちゃんと愛ちゃんは結婚するから避』

『ママ、お腹空いたから、ママの美味しい朝食作ってほしいな』



 利一さんの声が電話口から聞こえてくる。



『分かったわ。今すぐ作るわね』

『ありがとう。幸君に話したいことがあるからスマホ借りてもいいかな?』

『いいわよ』



 足音が遠ざかっていく。



『ごめんね。騒々しくて』



 どう答えていいか分からずに苦笑いする。



『ママのこともそうだけど、愛ちゃんのこともだよ。元気になった愛ちゃんが朝早くに幸くんの家に行ったんだよね?』

「はい。そうです」

『いつも本当にありがとね。迷惑かけるけど愛ちゃんのことよろしく』

「はい。任せてください」



 電話を切り、愛が食べる朝食を作り始める。


 みそ汁を作っていると、愛がキッチンにやってくる。


「こうちゃん! おはよう!」

「おはよう。琴絵さん達にここから学校に行くことは言ってるよ。もう少しでみそ汁とおにぎりできるからね」

「味噌の凄くいい匂いがするよ! それだけでご飯がたくさん食べられるよ!」


 愛は涎を垂らしながらお腹を鳴らした。


 みそ汁はできたので容器に入れて愛に運んでもらう。


 その間に手早くおにぎりを作り届けると、みそ汁が飲み終えていた。


「おかわり!」


 みそ汁の注ぎに戻ると、頬一杯におにぎりを口の中に入れていた。


 ぼろぼろと床にご飯粒を落としているのに気がつき、雑巾を取りに脱衣所に向かうと階段から下りてきている純と会う。


「おはよう。アイスココア入れようか?」

「入れてほしい」

「分かった。すぐに作るから座って待ってて」

「ありがとう」


 床を拭く前に純にココアを入れることにして、純と一緒にリビングに戻る。


 僕達の学校に行く準備が整ったけど、登校するまで1時間ぐらい余裕があるので僕達は座ってテレビを見る。


 そう言えば何か忘れている気がするけど思い出せない……恭弥さんに電話をしてない。


 平日の朝に純がいなくなっていたら心配する。


 鞄に入っているスマホを取り出して廊下に出てから恭弥さんのスマホに電話しようとすると着信音がなる。


 相手は恭弥さんから。



『純はそっちに行ってないか⁉』



 恭弥さんには珍しく焦ったような声で叫んでいる。



「きてます。連絡するのを忘れてごめんなさい」

『そうか……』



 安心したように溜息をする恭弥さん。



『幸が悪いんじゃないから気にするな』



 電話が切れてから、リビングに戻る。


 恭弥さんが心配していたことを純に伝えると、「忘れものしたから取ってくる」と言って部屋を出て行く。

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