22話目 幼馴染達とスーパー
家中を掃除したけど、3人でしたので時間はあまりかからなくて10時前には終わる。
ソファに座りながら昼食に何を作るのか話し合う。
「昨日の晩にテレビで見たローフトビーフおいしそうだったよ1」
「ローストビーフか。作ったことないから調べてみるね」
スマホで検索すると思ったより簡単に作れそう。
でも、作るのに2時間ぐらいかかる。
今から買い物に出かけても、食べるのが13時は過ぎる。
そのことを愛に言うと。
「美味しいお肉を食べられるなら、何時間だってらぶは我慢するよ! グ~~~~~~~~~~! ローフトビーフのことを考えたらお腹空いたよ!」
「ローストビーフができるまでに、簡単なものを作るからそれを食べたらいいよ」
「こうちゃん! ありがとう! 大好き!」
立ち上がった愛は僕の頭に抱き着いた。
「じゅんちゃんはローストビーフでいいかな?」
「おう。いい」
今日の昼食のメインはローストビーフに決まった。
主食はフランスパンを焼いてバターを塗って、純の分には砂糖をまぶせばいいか。
副菜はポテトサラダにしよう。
野菜嫌いの純でもジャガイモは好きだから食べられる。
ジャガイモだけでは栄養が取れないから、玉葱を微塵切りにして入れることも忘れないようにしないと。
愛の分には七味唐辛子をたくさん入れればいい。
ポテトサラダに初めて七味唐辛子を使うけど、マヨネーズと七味唐辛子は相性がいいから美味しいだろう。
僕だけが着替えられてないから、自室に行き着替えて3人で外に出た。
★★★
「腕を振った方が速く走れる」
車通りの少ない道を歩いていると、純が愛にそう言う。
前、愛に早く走れる方法を聞かれて答えられなかったから調べたんだな。
「やってみるよ!」
両腕を一緒に振って走る愛。
子どもが汽車ごっこをしているようで可愛い。
「じゅんちゃん速く走れるようになったよ!」
「……おう」
愛に笑顔を向けられた純は苦笑いをした。
「らぶちゃんこういう風に腕を振るともっと早く走れるよ」
交互に腕を振って愛に見せると、愛も僕の真似をし始めた。
「本当だ! さっきよりもっと速く走れるよ! 見て見て! じゅんちゃん! らぶ速く走れるよ!」
「おう。そうだね」
今度の愛の笑顔には純も微笑み返す。
そうこうしていると、行き慣れたスーパーに着いた。
店内に入ってすぐに愛が走っていく。
周りの客はそんな愛に温かい視線を向けながら避けている。
純はお菓子売り場の方を見ている。
「行ってきていいよ?」
「おう。ありがとう」
純は早足でお菓子売り場の方に向かう。
買い物かごを持って店内を回る。
愛が僕の料理を食べてくれるようになったから食材を多めに買わないと。
必要な食材が揃うとかごは重く感じる。
いつもだったら片手で持てるけど、今は両手で持たないと落としそうになる。
必要なものも揃ったから、愛と純を探す。
純はお菓子コーナーにいることが分かっているから、先に純を迎えに行こう。
向かっている途中で、純の方からやってきた。
「今日はお菓子を決めるのが早いんだね」
「CMでしていたのが、美味しそうだったからこれにした」
純は両手で持った1つのお菓子を見せてきた。
確かによくCMでしていて、普段お菓子を食べない僕でも食べてみたい。
「楽しみ!」
でも、お菓子に頬擦りをしている純に1つちょうだいとは絶対に言えない。
愛を探すために店内を歩くと、肉コーナーで見つける。
自分の顔が隠れるほどの大量の肉を両手いっぱいで持っている。
僕達が近くにいることに気付かず、僕達と逆方向に歩いていく。
「らぶちゃん」
「……こうちゃん! そっちにいたん……おっとととと、うわっ!」
愛は振り返り、持っていたお肉をぐらぐらと揺れながら落ちていく。
純が走り込んで全て摑む。
「ありがとう! じゅんちゃん!」
「おう」
お礼を言いながら愛は純に抱きお腹にすりすりとする。
……刺激が強過ぎる。
吐きそうになるけど、男子の汗だくな姿を想像する。
どうにか、『じゅんちゃんの上着を捲っておへそにキスをしてほしい』と本音を漏らさずに済む。
「じゅんちゃん肉を元の場所に戻してもらっていい?」
「おう。分かった」
そう言うと、純は肉を棚に戻す。
純から離れた愛の方に視線を向ける。
「らぶちゃん肉はたくさん買ってるから大丈夫だよ」
かごに入れているお肉を見せながら言うけど。
「お肉はどれだけあっても食べられるから、もっとあった方がいいよ! らぶはたくさんお肉が食べたいよ!」
愛は辛いものと同じ位、肉が大好き。
好きなものだったら際限なく食べるけど、小さな体のどこに入るのか不思議。
2人前分の肉を商品棚から取る。
「3人前はらぶちゃんが食べていいよ。もしまた食べたくなったら次の休みの日でも作ってあげるね」
「やったー! ありがとう! こうちゃん大好きだよ!」
満足してくれたので、僕達はレジで会計を済ませて外に出る。
自前の少し大きめのエコバッグ3つがパンパンになってすごく重たい。
「持とうか?」
買い物にくる度に純はそう言ってくれるけど断っていた。
無理していたわけではなく、これぐらいの荷物の量だったら運ぶことに慣れているから。
でも、今日はやけに重く感じる。
「お願いしてもいい?」
「おう」
純にエコバックを1つ渡す。
「らぶも持つよ!」
「重たいけど大丈夫?」
「お姉さんだから、これぐらい大丈夫だよ!」
心配だけど愛のやる気を尊重して、1番軽そうなエコバッグを渡す。
「こ、これぐら、い。おっと、おっとととと」
エコバッグに引っ張られるように倒れる愛を純が助けた。
後ろから強めに愛を抱いている純を見ると、また妄想を口に出しそうになる。
抑えるために汗まみれの男子を想像する。
疲れが一気にきた気がして、この場で吐きそうに……我慢……。
「こうちゃん行くよ!」
愛は持っていたエコバッグの片方を純に持ってもらっている。
震える手で必死にエコバックを握りしめ、2人の後ろをついて行く。
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