9話目 幼馴染達と休日
今日は土曜で学校が休みだから、目覚めてからベッドに寝転がりながらスマホを触る。
よく見ているWeb漫画のアプリを立ち上げると、お気に入りに登録している音色の作品が更新されていた。
女子高に通う女子達がなんでもない日常を送る話が1週間前に最終回だったので少しショックを受けていた。
新しい作品が上がっていて嬉しいな。
作品の表紙はセーラー服を着た女子2人が、濃厚のキスをしていた。
「……」
目を逸らし、もう1度見る。
黒髪の幼い女子が茶髪の大人びた女子にキスをされていた。
その作品の1話をタップして読むことに集中。
内容は前作と違って、女子達が仲良くしている日常系ではない。
黒髪の幼い女子が主人公で、その主人公を茶髪の大人びた女子や金髪の見た目が怖い女子や白髪の病弱な女子が奪い合うどろどろとした内容だった。
キスより過激な胸を揉むシーンも出てくる。
なぜか分からないが胸が高まり始める。
冷静な部分の僕がこれ以上読むなと訴えかけてきたから、スマホをホーム画面に戻して枕元に置く。
心が落ち着いてから、長袖Tシャツとジャーパンに着替えて1階に行く。
リビングに入ると、純がソファで毛布を被って寝ていた。
起こさないように毛布の上からそっと頭を撫でる。
キッチンで食パンを青汁で流しこんで食べた後、リビングに行くとジャージ姿の純がソファに座っていた。
「じゅんちゃんおはよう。ココア飲む?」
「こうちゃん、おはよう。飲む」
キッチンに戻ってホットココアを作り、純に渡す。
「……美味しい」
1口飲んで頬を緩ませる純。
適温だったみたいで安心した。
一肌ぐらいが純の好みの温度と頭の中に保存する。
机に置いているテレビのリモコンで電源を点けて、純の隣に座る。
「部屋寒くなかった?」
「大丈夫」
「4月になっても朝はまだ寒いから暖房してもいいよ」
「本当に大丈夫」
そう言いながら手を差し出してきたので握ると、温かくて柔らかい感触がした。
手が冷たい人は心が温かいと言うが、人によって違うことが純の手を握れば誰でも分かる。
男子には絶対に握らせたくないし、握らせないけど。
「じゅんちゃんの手はいつまでも握りたくなるね。温かくて気持ちいいよ」
「…………好きなだけ…………握ったらいい」
純の手がさっきよりも温かくなって、カイロみたいで寒い時の必需品にしたい。
「こうちゃん! じゅんちゃん! 遊びに来たよ!」
しばらくすると、元気よく白と黒のボーダーの長袖Tシャツに紺のオーバーオールを着た愛が部屋に入ってきた。
「今日は何して遊ぶ?」
愛は僕の隣に座って、僕の膝を楽しそうに叩いてくる。
「らぶちゃんは何したいの?」
問いかけに胸を張りながら自信満々に言う。
「らぶはディープランドに行きたい‼」
愛が行きたいと言うなら連れて行きたいけど、ディープランドは県外でここからだと新幹線を使っても4時間ぐらいかかる。
往復で8時間か……。
ホテルに泊まればいいけど、愛と純の親が心配する。
そもそも学生だけの県外の旅行なんて、何かあったら対処できないことが多い。
愛、純の願いを叶えるより、愛と純の安全を守ることが何よりも優先される。
でも、愛が1度言い出すと自分の意見を曲げない所もあるから、説得するのが大変だけどするしかない。
「ディープランドは長い休みの夏休みに行くのはどうかな?」
「らぶは今すぐディープちゃんとディープくんに会いに行きたい! ジットコースターに乗りたい!」
舌足らずでジェットコースターのことをジットコースターっていう愛が可愛い。
「こうちゃんも一緒にジットコースターに乗ろう!」
遊園地で満面の笑みで遊ぶ愛の姿が頭に浮かんで、今から遊園地に行く方に心が傾く。
「私は、バドミントンしたい」
純が珍しく提案してきた。
「じゅんちゃんは遊園地に行きたくないの?」
「今日はバドミントンをしたい。らぶちゃんはしたくない?」
愛はうんうんと唸ってから。
「らぶはお姉さん、お姉さんだから、じゅんちゃんがしたいバトミントントンしていいよ!」
「ありがとう、らぶちゃん」
「いいよ! 妹の我儘を聞くのはお姉さんなら当たり前だからね!」
体を動かすことが純は好きだから、バドミントンをしたいと言ったわけではない。
僕と同じで自分達だけ県外に行くのが危険だと考えて代案として提案したのだと思う。
純も愛を大切にしていると再認識すると、愛おしくなり頭を撫でていた。
気持ちよさそうに目を細める純。
愛はその光景を凝視していた。
純のことが羨ましいのかな。
「らぶはお姉さんだから頭は撫でられたくないよ!」
愛の頭を撫でようとしたけど手を弾かれた。
僕が……愛の気持ちを読み違えるだと……。
ショックを受けながら、純の頭を撫でて癒されることにした。
★★★
「こうちゃん! じゅんちゃん! 早く! 早く!」
「急に道路に出ると車とぶつかるかもしれないから気をつけてね」
「そうだね! 気をつけるよ! 前よし! 後ろよし! 右よし! 左よし! こうちゃん、大丈夫そうだよ!」
自宅を出てすぐに愛が走り出したので注意すると、その場で立ち止まり前後左右に顔を大きく振る。
純が外に出てきたのを見て愛は歩き始めたので僕達はついていく。
昼食を買って公園に行くことにしたから、今コンビニに向かっている。
「……こうちゃん、らぶちゃん」
名前を呼ばれたので立ち止まり振り向くと、純は言い辛そうに口にする。
「……お金がない」
「じゅんちゃんのお小遣いはもうないの?」
「……おう」
愛の問いかけに純はおずおずと頷く。
「じゅんちゃんは何を買ってお金がなくなったの?」
「……ジュース」
「ジュースでお金なくなるの?」
「……おう」
純と愛の会話を聞きながら思い出す。
1か月前ぐらいに、純の家で1000円の上に小遣いと書いた紙を置かれていたのを見た。
月の小遣いが1000円だとすると、ジュースでお金がなくことに納得できる。
愛は勢いよく自分の胸を叩く。
「お姉さんが買ってあげるよ!」
「……いいの?」
「うん! いいよ! お金はあるから! 少し前にどうじ……」
喋っている途中で愛が固まる。
何か隠し事を言おうとして途中で気づいたのだろう。
この前の放課後も漫研部に入っていたことを誤魔化そうとしていた時も同じような感じだった。
気になるけど、嫌われたくないので詮索することはしない。
「お腹空いたから行こうか?」
前を向いて愛にそう言う。
「うん!」
愛は大きく頷きコンビニがある方に歩き出そうとして立ち止まってからしゃがむ。
「こうちゃん! じゅんちゃん! 狐の形の石見つけたよ! こうちゃんにあげるよ!」
「ありがとう、らぶちゃん。宝物にするね」
愛から狐の顔の形をしている石を受け取る。
帰ったら、自室の鍵がかかる机の中に入れないと。
「僕だけがもらうのは悪いから、犬と猫の石を探そう」
「いいよ! 探そう!」
「おう」
数10分かけて犬と猫の顔の形の石を見つけた僕達はコンビニに向かった。
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