第六夜「常若(じょうじゃく)の星」
その星では祭りの真っ最中だった。この祭りは定期的に行われている物では無く、不定期に特別な事が起こった時に行われる祭りだった。
その特別な事とは子供の誕生。
この惑星は
人々は常若で死をも乗り越えて居た。しかし、それゆえに星の人口増加も世代交代も行われにくくなってしまった。
イーグルの見た世界は、一見幸せそうに見えたが新しい考えも知識も生まれない退屈な世界だった。
この祭りは120年ぶりに生まれた子供を讃えるもので、その子がひょっとしたら、新しい世界を築いてくれるかも知れないという希望、ある意味、イーグルの暮らす世界と同じ境遇。
地球は人口が大幅に減少してしまったが、この星は減りもしないし増えもしない。普通のロケットエンジンを使って通常のスピードで宇宙を進んでも、他の惑星に辿り着くまでの寿命は充分に備わって居たが彼等はそれをしなかった。常若・不死により新しい世界に漕ぎ出すだけの冒険心を失ってしまったからだ。
地球人類にも言える事かもしれない。21世紀後半には人類の平均年齢が100歳を超える国が生まれ始めるが、その国に新しい命が生まれる確率も少なく成って行った。そして老いを防ぐ方法を模索した。
人々は新しい命を育てるよりも、自分を育てる事に夢中になってしまったのだ。新しい事が生まれない世界。それが常若の世界だとしたら、これ程皮肉な事は無いだろう。若さから進まない世界、変わらない世界。
イーグルは常若の星の一人に聞いてみた。
「君達の希望は何だい?」
その問いに一人が答えた。
「希望?それは死なない事だよ。」
「死なない事が希望か。確かにそうだね。僕も出来る事なら永遠に生きて居たいと思うよ。」
「ならこの星に来ないかい?そうすれば永遠に生きる事が出来るよ。」
イーグルは暫く考えた、しかし彼の考えは変わらなかった。
「いや、僕は地球に居るよ、地球で生きて自分の希望を叶えるよ。」
今度は常若の星の一人がイーグルに聞いた。
「希望?君の希望は何だい?」
「そうだね……」
悲しい事だったが、イーグルはその質問に答える事が出来なかった。そのことに気が付いていなかったことにも愕然とする。今、自分にできることをすることが自分の希望、そして自分に今できることは宇宙の闇を見詰め続けることだけであることに希望を見出せるか、考えることなのかもしれないと。
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