■閑話休題1「ノベル」

 休日、イーグルは自室に居た。

 そして、棚から猫缶を取り出すとスプーンでカンカンと叩いて見せた。その音に反応して彼女は嬉々としてそと姿を現す。

 その子の名は『ノベル』。白い短毛の猫だった。ノベルはベッドの上でうっすらと差し込む太陽の日を浴びてゆっくりと寛いで居たのだが、イーグルが叩いた猫缶の音を聞くと、嬉しそうに起き上がり、ソファーから降りると彼の前に駆け付けた。

「ノベル、おいで」

 イーグルはそう言いながら猫缶をテーブルの上に置かれたノベル専用の食器に中身を掻きだした。

 ノベルは床からテーブルの上に器用にひょいと飛び上がると「にゃあ」と一言発した後、器の中の餌を食べ始めた。「いただきます」のつもりだろうか。何故か何時も彼女は餌を食べる前に一言発する。

 イーグルも自分用の食事をレンジで温めるとノベルの近くに置き食べ始めた。

 餌を食べて居るノベルはとても幸せそうだった。それを見ながらの食事もイーグルにとって幸せな物だった。小さな時から宇宙で生活しているイーグルにとってノベルは家族も同然だった。

 無論若いイーグルの両親は双方共に顕在で、地上で姉や妹達と一緒に暮らしている。イーグルの若さが上かどうかは分らないが家族に対して、それ程の執着は無かった。どちらかというと一人で暮らす事に開放感を覚えており、設備の充実したステーションでの生活には不自由は無かった。

 しかし、ノベルと一緒に居る時に案じる安心感は何だろうか?昔母親に言われた事が有るのだが、イーグルは野良猫を良く拾って来ては元の場所に捨てて来る様、言われていたそうだ。

 今はノベルと二人暮らしで寂しさもあまり感じ無い。仕事が忙しいという事もあるのだが下手をすると故郷の事も忘れがちになってしまう事も多い。しかし、冷静に考えれば、それはさ寂しい事だろう。有史以来、から続く血の繋がりを考えると、イーグルがこの世に生まれ出た事自体が奇跡に等しい事なのだから。

 イーグルはノベルを見詰めた。

「お前が僕の前に居る事も奇跡なんだな。」

 その問いに意味が分かったのか分らないのかはっきりしないがノベルはイーグルに向って「にゃあ」と一声鳴くと、再び嬉しそうに餌を食べ始めた。

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