第2話 2人の観測者
2050年 5月1日 研究特区人工島 フューチャーラボ
PM1:00 技術担当観測ルーム
「仮屋先輩もう調整終わったんですか!?」
後輩の研究員「桑野」が心底驚いている
「ああ、この世界に出来るだけ寄せたからな。もともと形や法則がある分1から世界を創るよりは簡単だったぞ。」
「先輩はどんな世界を造る予定なんです?」
「なるべく現代に近付けてこの先の未来の技術を観測したいと思ってる。そういうお前はどんな世界を造るつもりなんだ?」
「それはですね~みんなのロマン異世界です!」
「異世界?というとファンタジー的なアレか?」
「そうですファンタジー的なアレです!何十年も前から根強い人気をあるアレです!観測の準備が整い次第先輩にも説明してあげますよ」
「そうかわかった。しっかしテラフォーミングねぇ~とんでもない物を思い付く奴も居たもんだな」
「まさか仮想の人間に先人になってもらいその知識と結果だけをかっさらうなんてなかなか出来ない発想ですよね。」
「観測者なんて偉そうな肩書き付いてるけどやってることはただの神様ごっこなんだから笑えるよな。」
「でもどうして日本人にテラフォーミングを任せたんでしょうかね。」
「おそらく、そこそこの賃金があれば長時間働かせられてなおかつ賢すぎない程度に勤勉で従えやすくさらに想像力がなかなかに豊かな人材が欲しかったからじゃないかな?」
「そうだとしたら金さえ出せば無限に働いてくれて、逆らわず、妄想力が高いのが日本人だと思われてるってことですよね・・・笑えないですね。」
「笑えないな」
「まあ、わざわざこの研究所の為だけに人工島まで作って研究員の生活環境まで整備して、まあ給料は結構いいから文句は無いけどな」
「近くにコンビニも有りますしなんならスーパーもあるんで生活に不便しませんしね。」
桑野の二人でいつものようにくだらない話をし続け窓の外を見る。
研究特区人工島 フューチャーラボ
本島からフェリーで1時間の比較的近い場所に有り日本にあるありとあらゆる研究所を集結させた島でありその面積は東京よりも少し狭い程度だ。
日本へのテラフォーミングの設置に伴い造られており今では世界有数の研究機関の1つになっている。
島には小規模原子力発電所がありここにあるすべての研究機関の電力をすべてまかなっている。
「ところでお前の世界の調整はやらなくていいのか?」
「まだ時間がかかる予定ですし、ゆっくりやって行きますよ。よかったら観測地点の決定作業手伝いましょうか?」
「ああなら手伝ってもらおうかな。今回の観測地点は日本に絞ってある」
「なぜ日本にしたんです?」
「説明すると長くなるからこの世界設定の資料を読んでくれ」
「分かりました。え~と・・・」
仮想世界説明資料
・基本的にこの世界の丸写しの世界であるが日本だけ国土の形状を丸く固めて変化させてある、見ての通り円グラフのように真ん丸である。
・国土の改変の理由はより各地へのアクセスを可能とし人間社会の変化の可能性を高め新しい技術を産み出させるため。
・なぜ他の国の国土の改変をしなかったかというと歴史が忠実とかけ離れて観測困難になってしまうから。あと担当観測者が歴史にあまり詳しくなく辻褄を合わせて修正するのが不可能だったから。
・社会的ルールなどもほぼすべて現実に合わせている。
観測対象地域における簡易資料
仮想世界は現代に合わせて2050年になっているが唯一現実との違いは円となった国土の中心を居住区とし、そこにあるセンターステーションからそれぞれの特区に移動できるようになっている。なお食糧供給のために本島周囲に農業専用の人工島が造られているので、農業特区は本土に存在していない。
「日本だけだとしてもこれだけ改変したら歴史がヤバいことになったんじゃないですか?」
「ああ、ヤバいくらいメチャクチャになったからな、というか調整作業ほぼ歴史の辻褄合わせだったな。」
「そもそもどうやって辻褄をあわせたんです!?」
「そりゃあ強引につなぎ合わせるしかないだろう。
中には起こらなかった物すらあるが、今のところ問題はなさそうだ。」
「マジですか・・・」
「というかこの話はもう辞めよう。辻褄合わせの調整してた時の事思い出して頭が痛くなってきた。」
「なら日本だけ法律や技術、人々の価値観をそのままに国土を全く別物へと変えたっていう認識でいいですか?」
「そんな感じだ。説明下手ですまないな。」
「いえいえ大丈夫ですよ。ではそろそろ観測地点を決める作業に入りましょうか~」
「ああ、そうだな。」
創造観測機関テラフォーミング @burdimz
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