第30話 Kobold-Vagrant-Batshit-Bastard5

「ぐワああなんだこの姿ワン。ワタシ縮んだ!?」


 正気に戻った時にはもう遅い。魅了チャーミングでメロメロにしつつ三日三晩じっくりゆっくりドレインで搾り取り、年齢も若返らせた。可愛い二足歩行の仔犬が出来上がったぜ。俺のレベルも上がりこいつも再び青春でき、でWin-Winである。


貴殿との、お疲れ様でゴザル」


 バスローブと冷たいおしぼりを寄越してきたので受け取ったあとにどちらも部屋の端に放り投げ、お前がきれいにしろと無茶振りした。弾かれたようにむしゃぶりつく癖歪み忍者。3日間もお預けだったのが相当キていたらしい。


「あ、ズルい!僕も!」


「じゃあ鎖骨周りと腰骨周りを私が」


「え、じゃあ、ワタシも」


 流石は女傑、略してさすけつ。仲間と言う言葉に弱いので前後の仕打ちを無視してお掃除に参加しだす。共同作業させとけば満足して黙らせられるな。楽でいいわ。




「いや、パーティーに入れられないヨ」


 一段落したのでさすけつの登録を済ませようとしたら酒場のおねーさんに断られた。


 さすけつがこの世の終わりみたいな顔したので慌てて皆で慰める。猫背で香箱座りして聞く耳もたない。めんどくせえコイツ!


「なんでだヨ、おねーさん!狗尾草コボルト差別はよくねぇぜ!?」


「いや、ボーヤが蔑称で呼んでんじゃねーカ。粟の民ミレットだからじゃねぇよ」


 曰く、召喚契約したのでパーティーメンバーじゃなくてモンスター扱いらしい。公の場では首輪をするように仰せつかった。


「いいんだワタシなんて生き物は。お伽噺のコウモリのように見捨てられるのだ。ああ、あれはワタシそのものだったんだ」


「そ、そんなことないでゴザル!」


「そうだよ!例えコウモリだとしても、そしたらB兄ちゃんとおそろだから寂しくないよ!羽的に!」


「どんな話なんですか?気になります」


 1人だけ空気読まずにお話をせがんでくるが、それくらいの方が気が紛れてちょうどよいのかもしれない。持ち直してお伽噺の内容を話してるし。


「名前は登録できるシ、それで諦めな」


 さすがに落ち込み方がハンパないので、何か抜け道がないかとモンスターの登録について資料を貰った。牧場でモンスター同士の配合をしたり、教会の地下でモンスター同士を合体させたり出来るらしい。これは流石に女傑には、略してさすけつには読ませられないな。是非とも試してみたいが。


「あれ、お前は名前なんて言うんだ?」


「仲間たちはみんな名前を捨てたんだろう?ワタシも捨てるよ」


 1人、ズタ袋少女がピクリと動き目線を反らす、コイツだけ本名だったなそう言えば。


「そうだな。スーサイドがいい」


「ああ、命知らずな荒武者だもんな」


「それもある。実は本名に発音がちょっと似ているんだ。昔、聞き間違えられてな。それ以来気に入ってるアダ名なのさ」


 へぇー。他の奴の由来も聞いてみたいぜ。何故か頑なに教えてくれないけども。


「そう言う兄ちゃんはなぜB-Tなのさ?」


 忘れた。多分Body-Touchとかなんじゃないかな。もみもみ。


「ぃゃん」


「よそでやれヨ!後ろがつかえてんだよ!」


 仕方ない。平等に全員をタッチしつつ受付のおねーさん宅に帰る。再会の挨拶もそこそこにドレインで部屋に籠っていたので、今日はご馳走作ってまってくれているらしい。母性愛全開で俺はとても困るのだが、他のメンバーは母親が恋しい境遇だろうし、仕方なく我慢するぜ。


「いや、あの方はどちらかと言えばパパでゴザルな」


「「「たしかに」」」


 やめてやれよ。ショック受けるだろうがよ。

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