第19話 B-T-Beauty-Brother-Boozing!4

 あいつ出てくるだろうか。と期待しながら探索していたがそうそう一個人に会えるわけ無いよな。


 基本的にダンジョンは縦に進んで行かないと強い敵に出会えないので、あの格のやつが居たのがおかしかったんだ。新人の引率でもしてたんだろうか。


 モンスターを狩る狗尾草コボルトに奇襲を掛けて仕留めていく。対策されたら厄介なので、なるべく正体がバレないようサクサクザクザクやっていく。



 快進撃を続けすぎて厄介な場所まで来てしまった。天井はほとんど失われ、青空が網目状に覗いている。ほとんど狗尾草コボルトの支配圏だ。


「これは、砦でゴザルか?」


 癖歪み忍者、基本マジメなんだが、良く変な方向に突っ走る。ゴザル口調のくノ一はそこそこ好きな部類なのでまあ、いいか、とスルーしている。くノ一じゃあないが、似たようなもんだ。問題ない。


 情動にまかせついつい到達してしまったのはコボルトの前線基地。人類がそれ以上侵入して来ない様に建てられた巨大な関所のようなものだ。宿舎も運動場もある。彼らにとって、こここそが修練所ノビシャドと呼ぶべき場所なのかもしれない。

 迷い帰れなくなって困る少年少女がお互いに多いのでやむを得ず作ったという云われがある。両方の大人たちからは託児所ナーサリーと呼ばれていたな。狗尾草コボルトと人類とは、割りと良好な関係を築いているのだ。ダンジョンでは殺し合うが。


 ふむ。せっかくだし、城攻めするか。成功したら多分めちゃくちゃ怒って、報復にしばらく産道カナルにコボルトが溢れるが。狗尾草コボルトは尚武の気風が強いので、むしろ敵ながら天晴れと誉め称えてくれるかもしれん。


 何人か詰めてるであろう、レベルの違う大人達が厄介だな。見取り図は《測量士》だった頃の心のノートに詳細に描かれている。これを現実の紙に記して三人で計画を練った。






 バタバタと倒れていく狗尾草コボルトの夜番たち。遅効性の毒が効いているようだ。

 経験不足で隠密行動にまだ不安が残る癖歪み忍者だが、拙者、拙者がやりたい、拙者拙者、とすごいアッピールしてきたので逆に留守番させ、日中に俺が1人潜入して各所に毒を仕込んでいった。何しろ授乳も飛行も自由自在の体なので、当然体液を毒に変えることも可能なのである。邪聖少年が発案するまで気付かなかったけども。めちゃくちゃ便利な体だよな。ドレインが捗るぞ。

 瓶の水を飲んだもの、樽の酒を飲んだもの、皆一様にあれ、今日は何だか美味しく感じるワン、とか言いながら睡魔に襲われていった。後は無効化した奴が潜んでいないか探しだすだけだ。

 あいつ、刀剣使いの格上狗尾草コボルトが居ないかと期待したが、そんな素敵イベントが起こることもなく、砦を制圧した。


「凶悪な能力でゴザルな。敵が同じことをしないとも限らん。拙者も忍者の端くれ。《毒耐性》を付けるべきか」


 端くれというか、大名なので忍者率いる立場なのだが。

 むんむん悩んでいたので狗尾草コボルトの伝統工芸品っぽいコップにじょぼじょぼと毒体液を排泄してやった。


「弱くしといたから、飲んでみ」


「いや貴殿との、それは絵面が」


「うっひょー!いただきまーす」


 嫌がらせで癖歪み忍者に飲ませようとしたら邪聖少年が横から掻っ浚っていった。ごくごくと良い飲みっぷりである。こいつの方がよっぽど癖歪んでんな。お兄ちゃん教育を誤ったかもしれん。むしろ成功したとも言える。


「ち、違うよ?毒殺を警戒する立場だから。弱毒で低リスクに耐性付けられるし、そしたら色々安全性増すから。だからだよ?」


 珍しくしどろもどろに言い訳を重ねる邪聖少年を怪しく思いつつ、しかしそれはそれとして癖歪み忍者にも飲ませた。飲みやすい様にレモネード味にしたらだいぶお気に召してくれたのでこちらも気分が良い。


貴殿との、サイテーでゴザル」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る