第20話 B-T-Beauty-Brother-Boozing!5

 しばらく砦を維持してのこのこやってきた狗尾草コボルトを困らせようか。

 いたずらっ子のように邪聖少年が発言したが賢可愛かしこかわいいこいつのことである。将来を見据えて死なない今のうちに戦争の経験でも積もうとしているんじゃないだろうか。闇の君主とか呼ばれてたような元・邪悪だからな。今はすっかり俺に組み敷かれ、ところ構わず邪聖しまくっているが。


 デカすぎて維持は出来ないが、しかしまさか全員丸っと眠りこけて取っ捕まってるとは思わないだろうから今いる連中を生かしてだれも帰還させなければしばらく各個撃破出来るだろうか。

 レベルドレインで弱体化させつつ、奪った精気や魔力で乳をつくり猿轡の隙間から流し込んでやる。毒と滋養とをたっぷり含む様にイメージして絞りだしたので、皆、ねんねの如くぐっすりだ。

 格の違う大人狗尾草コボルトから根こそぎドレインしようと思ったのだが、吸いすぎるとうちの邪聖少年みたいに縮んでしまうかもしれん。

 そうなるとどこで噂が広まるか、どこで邪聖少年が類推され、名と故郷を捨てたビューティーだとバレるか、わかったものではないのだ。極力人目に付くところでは黒ずくめではあるが。

 難儀な運命の子である。と憐れに思いながら作業的に100人切り達成。レベルも上がりほくほくである。


 三交代でこまめに仮眠とりつつ半日。物見の塔の狭いスペースに尻ぺたくっ付け合いながらむしゃむしゃジャーキーと、煮こごりにして保存してあった骨を齧る。どちらも狗尾草コボルトの伝統料理で、戦場での貴重な保存食だ。俺や悪実ドワーフは咬筋が尋常でないので歯で割って骨髄を啜るが、邪聖少年なんかは金槌で叩いて中身を掬って食べてる。

 この肉も骨もデカイし旨いが牛のものでは無さそうだ。謎肉謎骨である。粟の民ミレットの国に棲息するという伝説のショタコーンじゃ無いだろうな?だったらやだな。うちの邪聖少年とは絶対会わせないと誓ったのに。


 ちょうど俺が眠っている時に動きがあった。軽く撫でるように起こそうとする邪聖少年がいじらしく可愛らしく、ついいじわるをしてしまう。


「起きてるでしょ、もう」


「んーん起きてない。チューしてくれないと起きない」


「やってないで動くでゴザル!12人、2パーティーいるでゴザルよ!?それも手練れの!」


 手練れと聞いて即反応。起き上がりに唇を奪いつつ門の向こうを見やる。まだ豆粒ほどの距離だが、あいつではないな。だいぶ格上だが、雌の個体だ。八つ当たりに前を座る癖歪み忍者の袴に手を突っ込み、バンデージで締めた褌ごと尻を掴む。


「何故に!?」


「いや、習性だ。仕方ないのだ」


 思った以上にあのふざけた狗尾草コボルトとの再戦を望んでいたらしい自分が恥ずかしく、つい尻を揉んで誤魔化したのだ。つやつやもちもちである。


 しかし、雌個体の強力な狗尾草コボルトか。過去生でも度々見たあの女傑を思い出す。

 ある時は敗残兵の取り纏め、ある時は懲罰部隊の隊長、実力はあるのに、毎度毎度個人も集団もバカ強くて意気もあるのに、環境に恵まれず燻ってばかりいた。たまに、運良くチャンスを掴んで近衛隊にいる過去生も見たことがあるが。

 その点で言えば桜色リップな邪聖少年と同じ、運命の賽子によっていくらでも出目が変わる数奇な人物なのだろうか。

 あの女傑だったらやだな。強すぎて勝負にならないかもしれん。この時期に既に2パーティーの隊長ってことだろ?どうしよ。放棄するか?


「いや、彼ら、多分仲良しじゃない。派閥があるね。それも致命的な。チャンスがあるよ」


 邪聖少年が何か見抜いたらしい。優秀な兄弟を持てて幸せだ。お礼にチューをしてやろう。


「いや、いちゃついてないでさ!拙者のお尻返して!?」


 いやだ。つやつやもちもちだからである。

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