第18話 B-T-Beauty-Brother-Boozing!3

 《忍者大名》、上級職らしく装備の点数は多かった。多かったが。


「上裸は不味いんじゃないか?みんなぎょっとしているぞ」


 足袋に手甲、袴にマフラー、手裏剣苦無に鉤爪と忍者らしい装備品ばかり支給されていたようで、こいつは底に厚く革を敷いた足袋以外全く装備せずに眠らせていたことになる。地味な色だからな。コンプレックスもあって派手な、体型もごまかせる鎧袴を金に飽かせて購入したようであった。


「貴殿も街に来たときは裸だったそうではないか。拙者の上裸くらいなんだ」


 状況が違うし。同種の悪実ドワーフすら顔を赤らめているので、こいつ本当に美人顔なんだろうな。いやなんだ。親分子分の関係というか、教父として乳まで与えた教え子の肌を見られたくないこの母性をわかってもらいたいものである。


 仕方ない。邪聖少年を見張りにして、ちょっと路地裏へ出る。




 ダンジョンに向かう前に無駄な時間を楽しく浪費して、武器屋でバンデージを購入した。《モンク》が腕に巻いたり《鉄砲玉》が腹に巻いたりする、武器にも防具扱いにもなり、行動を妨げない万能装備だ。スピード重視の職業がちょうど良い装備が無いときに重宝している。

 そのバンデージを癖歪みの胸に巻く。

 男女関係なく、胸は秘してもよいものだと教え込ませた。もぞもぞぴくんぴくん反応しながら巻いていたのが実に嗜虐心をそそられ、再び無駄な時間を楽しく浪費してしまった。

 初心者ノービス産道カナルに潜る前にだいぶ汚れてしまったが全員初期装備、《必要最低限の性能を維持》のスキルが付いた壊れ装備なので汗だくのままずんずん進み、以前、狗尾草コボルトたちと大立ち回りした水飲み場までついてそのまま飛び込んだ。対岸に見えたコボルト達を目指す。


 君主系の要素を持つため集団戦にも適性がある《忍者大名》のスキル《水遁・上》によって三人とも息継ぎもそこそこに水中を駆け回る。

 突然の水飛沫に構えるコボルトの一匹を水中に引きずり込む。陸地ばかり気にしていたので楽々首を掻き切りって始末。1匹目。

 邪聖少年は水遁の効果によって濡れることなく水場をこっそりと上がり岩陰に潜む。本当はタンク兼回復役な職業なのだが、すっかりボウガンでの暗殺が板に付いてきた。ナニやらせても具合の良い奴だぜ。


 さて、今回初共闘となる癖歪みであるが、流石は忍者。水遁の効果を一番十全に使いこなし、水の上を走り回り狗尾草コボルトたちを翻弄していく。君主系にして侍系にして忍者なので、タンクもアタックもトリックもお手の物だ。今回は、コンプレックスで鍛えて来なかったトリックの分野を強化する場である。

 敵地たる修練所ノビシャドに近いこの先のダンジョンは、人類側がいないので獲物の取り合いが起こらず、モンスター達を狗尾草コボルトごとまとめて始末出来るので経験値効率がよい。味方が全くいないということでもあるが。


 手裏剣と苦無をポンポン投げつけ3匹仕留め、死体は計4匹。鉤爪で剣を払いつつ、バンデージ巻いた手刀で5匹目の心臓を貫いた。怖。素手て。忍者怖。


 邪聖少年がそつなく暗殺して死体は計6匹。1パーティー仕留めて戦利品を回収した。圧倒的じゃないか。


「決して無駄ではなかったが、無理な修練を積むよりも、今の姿がしっくりきます。貴殿との、ありがとう」


 ウサギ耳を機嫌よくぴこぴこさせて宣う癖歪み忍者。暗殺には程遠い血塗れ具合である。初期装備と違って胸と手に巻いたバンデージの汚れは落ちないので、だんだん赤黒く染まって隠密度も上がって行くんだろうな。上裸だから肌は眩しく輝いてるが。


 俺はかつて何処かで聞いた、どんな強者も一撃で仕留める可愛いウサギ型モンスターの伝承のことを思い出し戦慄した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る