第3話 blue-bad-boy3
とても素敵な人に出会った。
コートの隙間から覗く美しい青い肌に、輝く薄桃の髪。濡れた黒の眼球に浮かぶ金の瞳は、この世ならざる人外の美だった。人外。自身の浮かんだ言葉にハッとさせられ、そして自分を恥じた。
良く見れば、そのすらりとした首筋に首輪の跡があった。可愛らしい鼻筋の上、形のよい額から柔らかな頬までを薄ら走る傷があった。
そう、村で叔父が憤っていたのを思い出す。
例え肯定的な理由であろうとも、人ならざるものと思われる事はこの人にとってどんなにか屈辱だろう。
気持ちを切り替え、僕達と相席を希望したこの素敵な人、B-Tをテーブルに招く。
村の興りの言い伝えには、初代の村長の奥さんの一人が
なるほど、この素敵な人を見れば言い伝えも納得する。その心魂からの美しさは種族の特性なのかもしれない。こんな人を迫害するなんて。
「B-Tさんは、どの魔族とのハーフなんですか」
打ち解けた頃に、幼馴染みの《僧侶》が質問した。
デリケートな話題だが、B-Tさんには揺るがない大器のような、何とも言えない信頼があった。僕達はこの人の向こうに、故郷の母を見ていたのかもしれない。
「サキュバスですよ」
「
「え、あ、じゃあクォーターなんですね」
「はい、四分の三は
どおりで、人を超えた美しさのはずだ。
そのまま、どうしてもこの人を引き留めたい、浅ましい気持ちもあったのだろう。つい話し込んでしまい。そのまま
あの人は痛ましいことに布一枚も持たず、夜はその輝く裸体を晒していたが、その有り様が、気高さをより一層押し上げているように感じた。
「こんなに気分が良いのは生まれて初めてだ」
何と心を締め付けられる言葉だろうか!
「もっと、楽しい時間はこれからいくらでもつくれますよ!」
幼馴染みの《魔術師》が感極まってあの人の手を掴む。
「これから大いに君達に迷惑をかけてしまう。それでも良いのかい?」
濡れた黒曜の眼球が一層光る。
何ということだろう。この素敵な人に僕達は頼られている!
その晩は、僕達四人の、とてもとても素敵な時間になった。
翌朝、もう昼に近いほどに起きた時にはもうあの人の姿はなく。
『困ったときにまた来る』
と、そう書き置きされていた。
もうちょっとしたら次のダンジョンに潜ろうと思っていたけど、何だかレベルの上がりも悪いし、慎重さは美徳だと習ったし、もう少しだけ最初のダンジョンに潜っている。もう少しだけ。もう少しだけ。あの人がもう少しだけ困らなくなる、その時までは。
あの三人のお陰で古傷もほとんど消えたな。ちょっとずつレベルドレインもしたが、流石は《悪漢》。レベルアップの気配は全くない。どれだけ経験値が必要なのか。
しかし、終始キラキラした眼で見られるのは居心地悪かったな。
夢魔の
怒られない程度に数パーティーからタカるつもりだったが、やりすぎるとバチがあたるかもな。
「あたるねぇ」
宿屋のお姉さんがいつの間にか、汚れたシーツを抱え後ろに立っていた。心を読んだのか?
ニッコリ笑ってそれから何も言わずに去っていくお姉さん。なんだあの強者感は。一番手強い相手かもしれん。これは警告なのか?やりすぎるとマジで神罰下りますよ。という。あと何人だ。何人まで搾取して良いんだ?ダメだ。ギリギリのラインを見極められない。
「地道にレベル上げるか」
何年かかるかわからんが。
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