最終話 おかあさんといつまでも一緒

母さんの腹に宿った命は、順調に育っていたらしい。あの日、病院で診察を終えた母と一緒に家に戻ろうとすると、もう一人の母さんは病院に残っていた看護婦さんたちと何やら相談を始めた。そして一時間ほど経ってから「母子共に問題なしとのことで無事に出産できます」と伝えられた。その後すぐに、母たちは病院を後にした。母曰く『あと一週間ぐらいでおなかの子が出てくるはず』との事で母たちの出産に向けての準備が始まった。と言っても特に変わったことは無く。

俺は家で普通に過ごすこととなった。父はまだ入院中なので、俺と母の二人だけでの生活となる。母の仕事については、『とりあえず今は休職する方向で話をしているけど』という話をしていた。どうなるのか正直わからない、と言う事であった。

ただ、産休に入ると同時に仕事をやめて専業主婦になるという母の言葉を聞いて 俺も母の為に何か力になれることがないかと色々考えていた。

もちろんまだ小学生だからできる事は限られている。せいぜいが、食事を作ってあげたり、家の事をやってあげたりするくらいだったのだが、そのたびに母からお礼やら感謝をされる。

それに対して返す言葉がある。微笑みながら――あ…

と、言おうとしてやめた。

代わりにとびっきり猫なで声で甘えてみる。

「ねぇ…おかぁさ~ぁ~ん」

「美由紀お母さんに見つかったら怒られるわよ」

母はエプロンを外して正座した。むき出しの素肌が寒そうだ。けど、やわらかくて、あったかい。

妹が生まれるまでの期間限定。僕の指定席だ。

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異世界トリップするおかあさんといっしょ 水原麻以 @maimizuhara

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