第3話〜居候とか勘弁して
巫女のバイトは短期だから、あの蔵の出来事があってから数日ぐらい経ったあとに終わった。めっちゃ給料良いんだけど。
で、でよ?なんでか分かんないんだけど…
「で、蔵を撤去されて行くところもないから人の姿で私の家に来たと。」
「そういうことになるな。なにせ妾はこの麗しい美貌を持っておるからやたらと人間共に見らてしまう。だから、蔵森の家が1番いいと思っての。」
「アンタ私しか居ないでしょ、知ってる人。」
なんでここにこんな美人な女の人がいる訳?しかもあの蔵の中の神が人間になってんの?もー意味わかんないってば!
コイツは私の部屋のど真ん中で正座して話している。私は椅子に座って、一応コイツの方に向いているけど机に肘をついている。
「どうお母さんお父さんに説明しろと?」
「心配は無用じゃ、神の力を
なにお母さんお父さんを改造してんだ、このバカ狐。というかそんな事も出来るんだ。
「邪神ってすげー。」
「あながち間違えではない。しかし妾は幸福や願望を叶えられる良い神でもあるぞ?代償はあるが。」
「良い神様は5円ぽっちで願いを叶えてくれんのよ。トモコ、アンタの代償ってどうせ生贄とか人でしょ。」
「否定は出来ぬ。」
ほらやっぱり。つーか、なんでスーツ姿なんだろう。耳とかしっぽとか生えたまんまだし…どうやってしっぽを出してるわけ?
「みんなちゃんと仕事しないと家計厳しいってお母さん言ってたし、タダ飯は無理だからね。まぁスーツ着てるし就活すれば?」
耳がピクピクしている。あ、そうやって動くんだ。そしてトモコは仕事について話した。
「妾、役職についてはもうあるのじゃ。確か恵比寿グループと言ったか。」
「ふぁ?!ちょー大手じゃん!うっそー!なんでなんで?!」
「妾の実力じゃ。」
「絶対に脳弄り回したでしょ…」
恵比寿グループは大手の会社でIT、自動車産業、食品、半導体とか色々な業種がある日本トップクラスの会社。
よくホワイトって聞くし待遇も良いし…何より残業がなく定時で帰れるし…とりあえずめっちゃくっちゃ良い会社!
でもその分入社するのがすごく大変って聞く…妖術ってすげぇ〜。
「ま、それだったら心配は無用的な。」
「さあ、妾と契りを結ぼうぞ。人間は指切りげんまんで契りを結ぶのであろう?近所の稚児がそう言っておった。」
「ちぎり…?」
ちぎりをむすぶ?…えっと、とりあえず約束するって感じ?まぁ、なんというか指切りげんまんでするんだから軽い約束でしょ。
「これからもよろしくの、蔵森。」
「はいはい、よろしくねトモコ。」
「これで番になったな。」
「つが…もー今の言葉を使ってよね。」
私より大きな手、しかも私より細い指。羨ましいんだが。つーか久しぶりに指切りげんまんしたから…これがエモいって感情?
ま、それからして居候が始まったんだけど部屋がないから私の部屋でトモコが寝ることになったんだけど…ふわふわのしっぽに勝てない。なんなのあれ!ヤバくない?!
それで朝、学校に行く時間だけど今日はお母さんはいないみたい。台所からトモコが出てきた。
「今日から妾が作った愛妻弁当で寺子屋に行くと良いぞ。」
愛妻弁当って…ま、この手のノリは女子高で散々ネタにされてきたし慣れているけど。
「お母さんは?」
「お義母さんは寝坊じゃと。だから妾に頼んだのじゃ。」
私はトモコからお弁当を貰い、カバンの中に入れた。今日はちょこっとだけ早い。
「OK、じゃ行ってきまーす。」
「蔵森、いってらっしゃい。」
ここまでは良い。ここまではね?お昼休み前の授業が体育の時間が持久走で死にかけ…いや1回2回は死んでるわ。
そんな体力がない状態で、楽しみにしているお弁当を開けてみるとさぁ?
「げっ…」
「あれ、蔵森の弁当おばあちゃんが作ったの?すごい渋いじゃん。」
「まぁ…うん…そんな感じ。」
(あの馬鹿狐ー!!全部茶色じゃん!煮物のオンパレード開いてんじゃねー!)
友達に思いっきりその渋いお弁当を見られた。恥ずかしいんだけど…いつもはお母さんが作ってくれるあの可愛いキャラ弁のお陰で友達と会話が弾むってのに。
一方、トモコは会社に出勤しパソコンの入力や仕事を全て下僕にされていた。青い魂がふよふよ浮いていても誰も気にしない。
「アヤツの喜んでいる顔が浮かぶわい。ふふ、また会うとは思っておらんかったぞ。魂の形は変わらないものなのだな。自分の子孫に転生するとは奇妙なものじゃな。」
「…妾はソナタをもう離さんぞ。」
そして2人は永遠に幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし…めでたくないってば!
えるじーず! 坊主方央 @seka8810
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